『値決めは経営である』その1

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稲盛塾長の講話です。

京セラフィロソフィより第3章「京セラでは一人ひとりが経営者」

 経営の死命を制するのは値決めです。値決めにあっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多くとるのか、その価格決定は無段階でいくらでもあるといえます。
  どれほどの利幅を取ったときに、どれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の 価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。その点はまた、お客様にとっても京セラにとっても、ともにハッピーである 値でなければなりません。
 この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行なわれなければならないのです。

 お客が喜ぶ値段の一番高い数値を瞬時に射止める
  会社設立時、京セラはエレクトロニクス用の絶縁材料としてのセラミックを作っていました。当時、真空管やブラウン管を作っているメーカーでは、そのなかに 使う絶縁材料が必要でしたが、既製品がなかったため、京セラが新しい絶縁材料を試作してメーカーに納め、試験の結果が良ければ、後々その真空管が量産され る段階で、引き続き注文をもらう。こういう受注生産の仕事から、京セラは始まりました。

 もちろん、同業の先発メーカーが既に納めている 場合もあります。そこへ京セラの営業が注文を取りに行けば、新しい会社が注文を取りにきたというので、「今、1社から購入しています。京セラでも作れるな らその見積りを出して下さい。その結果、安ければ買ってあげましょう」と言われる。そして見積りを提出し注文をもらうことになるのです。

 しかし、こうして段々と会社が大きくなり、お客様が増えてくるに従って、私達1社だけではなく、2社も3社も同業者が出てきて、競争になっていきました。
 当然、お客様は原価を下げるために、安く買いたいと思われます。ですから、営業マンに、必ずといっていいくらい「京セラでは、いくらになるのか見積りを出して下さい」と言われました。
  しかし、見積りを出してみると「別の競争会社から、もっと安い、1割も安い値段が出ている。そんな値段では注文は出せません」と言われるのです。営業マン はビックリ仰天して、従来の値段では注文がもらえそうにない、もっと安くしなければだめだというので見積書を作り直して、またお客様のところに持っていき ます。しかし、それをちらっと見て、「こんな値段ではまだダメだ。この前、同業者は1割安いと教えてあげたけれども、その後、また安くして持ってきたよ」 と言われる。つまり、天秤にかけられているのです。

 私は、営業マンからその話を聞いてどうもおかしいと思いました。同業者も急にそんな に安く作れるわけがありません。つまり、その1割5分は駆け引きなのか本当なのかということです。駆け引きだと思って、同業者も1割ぐらいしか引いていな いはずだと、ヤマカンで「ウチはやっぱり1割しか引けません」と言えば、それが外れた場合には1割5分引いた同業者に注文が行って、ウチは注文がなくなり ます。

 受注生産の場合、作業員を抱え、設備を整えているのに突然仕事がなくなるようなことがあれば死活問題です。値引きが駆け引きなの か、本当なのか、正しく見極めなければなりません。ですから、私は、営業マンに購入担当者とやり取りを再現させ、そこから少しでも真実を汲み取ろうとし て、一生懸命に苦心いたしました。

 そうして苦労しているうちに、大変重要な点に気がつきました。営業が納入単価を交渉するとき、一般的にお客様の言い値に合わせることが多く、たしかに先方に合わせなければ注文は取れないかもしれません。
  しかし、営業マンが1割5分も安い値段で受注すると、その瞬間から製造側は1割5分のコストダウンをしなければならないことになります。1割5分のコスト ダウンは相当に難しく、製造部の人達は本当に辛酸をなめるような苦労をしなければならないのです。なのに営業はひと言でもって、「いや、お客さんはそれで なければ買わないと言われますから」と言うのです。
 「君、そんな簡単な......。1割5分と言うが、そんな簡単なことではないんだ」
 私はそう思いましたが、1割で見積りを提示して注文が取れなければ死活問題です。
 そこで私はよく、次のように営業に説教をし、教育をしました。

  営業は安くすれば注文が取れるのだから、製造の人達だけが非常に苦労を押しつけられるのは、不公平ではないか。営業は安価な注文を取ってもえらくはないん だ。営業にも知恵があり、技術がなければおかしいではないか。営業に知恵があり、技術があるとすれば、それはお客さんが喜んでもらう値段、つまり、ウチが 提示した値段を、「この値段なら結構です」とお客さんが買ってくれる値段、その喜んで買ってくれる値段の一番高い値段で売るのが営業の技術なんだよ。
  君はさっきから1割5分と言っているし、事実1割5分安くすれば買ってくれるかもしれない。しかし、お客さんは本当にその値段以上では買わないのか。お客 さんは掛け値を言っただけで、1割でも買ってくれるかもしれない。いや、6%引きでも買ってくれるかもしれない。つまり、お客さんが買ってくれる一番高い 値段で売るんだ。
 お客さんが喜んで買ってくれる値段よりも安ければ安いだけ注文はもらえるんだから、それでは意味がない。かといって、それ以上 の値段では、他の安い同業者から買うから要りませんよと言われて、突然に受注を失ってしまう。それでは困る。だから、これ以上なら注文が逃げてしまう、こ れ以下ならなんぼでも取れる、その一番高い値段を瞬時に射止めなければならない。
 だからこそ、お客さんと値段の相談をする場合、心血を注いで物 事を考えなきゃならん。駆け引きなのか、それとも本当なのかどうなのか。それは真剣勝負そのものであって、君みたいに、言われたからすぐ「その値段でなけ れば売れません」と言ったのではどうにもならんではないか。

 つまり、値決めとはお客さんが喜んで買ってくれる最高の値段を決めるということなんです。
  何でもそうです。下請けでも何でも、安ければいくらでも仕事はもらえますし、高ければヨソに取られてしまいます。ですから、仕事をもらえる最高の値段を出 す。それは営業担当者が軽々に決める問題ではありません。それは伸るか反るかというぐらいの大問題です。だから、値決めというのは、営業の担当者に任せる ものではなく、経営のトップが決めるものなんです。
 営業が持ってくる資料、情報、その真偽をとことん調べ尽くして、調べ尽くして考えていかなければならないことなんです。

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このページは、前田が2008年8月13日 00:49に書いたブログ記事です。

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