『値決めは経営である』 その3

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稲盛塾長の講話です。


高価格でも市場席巻1(厚い販促活動でライバル飲料を蹴散らしたコカコーラ)
 いろんな例を挙げていきます。
 終戦後の闇市の時代に、コカコーラが日本に入ってきました。コカコーラが出る前、戦前はラムネやサイダーが炭酸飲料の主流でしたが、それは決して高い値段ではありませんでした。当時、コカコーラはラムネやサイダーに較べて、2倍、3倍もの値段であったと思います。
  コーラを飲んでみると薬くさい味がして、こんなものは売れないだろう、ラムネやサイダーよりもべらぼうに高いし、なんでこんな値決めをするのかなと思いま した。 ところがご承知の通り、それが席巻をして、ラムネやサイダー等は蹴散らされてしまった。本当なら、庶民が飲めるような安いもので、いいものでなけ れば市場は取れないというのが一般の常識なんですが、コカコーラが市場を席巻していくのを見て驚きました。

 では、いったいなぜなのか、 実はあの当時、販売店にたくさんのマージンを渡していたのです。コカコーラを売ってもらうお店には、店の前に「コカコーラ」という看板をタダで立てて、販 促費という名目のお金を渡す。なるべくサイダーやラムネは売らないで、コカコーラを売るようにというインセンティブを得るために、お金を出して支援してい たわけです。
 高い値段で売りますから利潤が大きくなります。ですから、利潤の大半を販売店に還元し、同時に宣伝広告に膨大な金額を使えたので す。そのために薄利で安いマージンのラムネやサイダーは、コカコーラに匹敵するような広告宣伝もできないし、販売の方々に対してお金を渡すこともできな い。結局は蹴散らされてしまうわけです。
 つまりコカコーラの場合、高い値段であったから売れなかったのではなくて、高い値段だけれども、そこで 得られる粗利を販売促進に有効に振り向けていった。それによって市場が決まっていったという感じがします。そういう意味では、値決めは高いから悪いとか、 安いからいいということではなくて、どういう値決めをするか。それが経営そのものだということになります。

 高価格でも市場席巻2(国民の健康を守ると意義付けたヤクルト)
  次の例はヤクルトです。ヤクルトはヤクルト菌という新しい乳酸菌の株を使って作るわけですが、牛乳を乳酸発酵させたものは整腸作用がある、お腹の調子をよ くするのに非常にいいと言われています。ヨーグルト、ヤクルト、みんな同じ種類のものです。カルピスも乳酸を発酵させたものですが、ただヤクルトだけは、 発酵させた乳酸菌がそのまま入っています。一方、カルピスは乳酸発酵をさせても、その後に菌が死んでしまっています。
 ヤクルトが出だした頃、あ れはあまりもうからないだろうなと思っておりました。すでにカルピスはありましたし、整腸作用もある。何であんな小さいプラスチックに入ったヤクルトがカ ルピスに比較して高いんだろうと、不思議に思っていたものです。 ところが日本の津々浦々、ヤクルトはたいへんな普及をして、素晴らしい会社に発展をして いきました。日本だけではなく、ブラジルでもヤクルトは成功しましたし、その他の外国、東南アジアでも成功しておられます。

 ヤクルト は、全国のヤクルトおばさんが乳母車を引いて売り歩く販売形態です。ヤクルトは高いから粗利が大きく、その分マージンが大きいから、おばさん達にもたくさ んのお金をあげることができる。おばさん達も十分なアルバイトになるし、メシが食えるというので、熱心に売って歩かれるのです。
 しかも、売る前 には必ずヤクルトで研修があり、「これはただ単に清涼飲料剤を売るのではありません。健康を売るのです。国民の健康はヤクルトにお任せください。これを毎 朝一本飲めば、必ず健康にいいんです」と教えられるのです。つまり、ヤクルトを売るのではなくて、健康を売るのですという大義名分までヤクルトおばさん達 に植え付けて、「国民の健康を守るために我々は売っているのです」と意義付けることによって、高い値段でも大成功されたのです。

 値決めというのは経営そのものなんです。高い値段をつけてうまくいかずに失敗した例も多くありますし、安い値段をつけて失敗した例も多くあります。では、どういう値決めが必要なのか。これは非常に大きな問題なのです。

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このページは、前田が2008年8月15日 00:53に書いたブログ記事です。

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