今日で46歳になりました!
巻第二 総論 下
1 食後の養生法
朝は早起きをし、手と顔を洗い髪を整え、便所にいき、食後は腹をなでおろし消化を助けるのがいい。さらに、第十二助骨部の部分を人差し指の内側ですじかいに、繰り返してなでるのがよい。
ついで腰をなでおろし、その下部を静かにたたくこと。強くたたいてはいけない。もし食べ物が胸につかえたときは、上を向いて2・3度ばかりげっぷを試みると効果的である。
朝夕の食事の後は、長く座っていてはいけない。さらに横になって寝るのはもっとよくない。長く眠れば、気をふさいでしまい病気になり、それを続けると短命になる。食後は300歩ほど歩くのがよい。時にはもう少し長く歩くとさらに、よい。
2 労働の大切さ
家にいるときは、自分の体力にあった労働をするのがいい。立ったり座ったりする動作にかかわらず、部屋の中ですることは、なるべく自分で行うのがよい。そうすれば、人を使うときの気を使わずにすむし、自分の行いたいことを正確に行うことができる。
常に体をうごかすようにしておけば、気と血液がよく循環し、食物もよく消化するので、病気にならない。しかし、無理をするほど動き回ったりするのは、疲れるのでよくない。自分にあった適度な運動をするのが一番よい。
3 働くことは養生の道
人の体は、時々運動をし、手足を働かせ、よく歩き、同じ場所に長時間すわらないようにすれば、健康でいられるものだ。
流水はくさらないが、たまり水はくさる。開き戸の開閉する軸は虫は食わない。つまり常に動いているものは、悪くなりにくいものであるということである。
人の体も同じで、同じ場所に長時間すわったり、食後にすぐに寝てしまうと、病気になりやすいのだ。養生の道とは、こういうことをしないことだ。
4 『千金方』の養生法
『千金要方』での養生の道は、「久しく行き、久しく坐し、久しく臥し、久しく視る」ことは禁物であるといっている。
長く行くこと?、長く座ること、長く横になること、長く契る?ことはよくないということである。
5 寝る時間を少なくする
食後、すぐに寝るのはよくない。昼間に寝るのはもっとよくない。病気の原因になる。もし、とても疲れていて昼寝をするときは、短い時間にすべきである。
6 昼寝の禁止
日の長い季節になっても昼寝をしてはいけない。人によってはその季節になると、日が沈めばすぐに眠くなるかもしれない。そういう人は夕食のあと軽い運動をしたり、散歩をしたりして防ぐのがよい。眠らなくても横になっているのもよくない。夕方の時間は起きていなければいけない。
こうすれば、夜になっても起きていられる。できれば、夕方の時間に横にならないのが一番よい。
7 過信の戒め
養生の道は頼む心を戒めている。
自分の体が丈夫だから、若いから、病気がよくなったからといって、気を許してしまえば、健康の道から外れてしまう。刃のするどいもので硬いものを切ると刃こぼれするように、自分の内臓が強いといって飲食や色欲に油断をすれば、病気になってしまうということである。
8 小欲をすてよ
宝石をスズメに投げて得ようとすることは、ばかげている。それと、同じで人の一番の大事な健康をかえりみずに生活をし、病気になるということは、小石のかわりに宝石を使ってスズメを得ようとしていることとかわりないことである。
9 心は楽しく身は労働
人は悩み事をもたず、毎日からだを動かし働いているのがよい。休みすぎで、好きなものを食べ、酒を飲み、色を好み、体を休めすぎていると、かえって健康にはよくない。
病気でもないのに、栄養剤や薬を飲むのもよくない。子供をあまやかしすぎると、子供本人にとってもよくないことと、同じことである。
10 長命と短命
長命と短命を決めるのは、人の生き方による。自分の思うがままの生活をつづければ、健康を損ない短命になる。逆に節度をもった生活を続ければ長命でいられる。
11 予防の必要性
将来の問題に対して悩むことは、問題が起きる前に手立てを考えるということである。将来のことを思えば今の生活のことを慎重に考えて暮らすことが大事である。
12 酒食・色欲を慎む
酒色、色欲のおぼれていても、その楽しみをすべて味わう前に人の体のほうが、滅んでしまうものだ。
13 元気を養う
人の生命力というのは、使えば減るし、増やす努力をすれば増える。このバランスがマイナスなら、どんどんと生命力が少なくなり病気になりやがて死ぬであろう。多くの人は、増やす努力もしないから短命で終わってしまう。生命力とは限りあるものだから、限りのない欲望にそれを使うのは間違っている。
14 慎みは健康のもと
一生を平穏に過ごすためには、人は毎日の生活を振り返り悪いことを止め、無理な生活をしないで暮らせば、達せられる。
15 はじめの自制
楽しいことを続けていれば、必ずあとでつらいめにあう。楽しく生活するために努力をしてから楽しむべきであろう。
16 養生法の要点
養生の道は他言を必要としない。
実行することは、大食せず、体に悪いものを食べず、色欲をおさえ、悩み事をなくすことである。
心を平静にし、言葉を少なくし、まわりの環境に合わせた生活をし、適度な運動を行い、食後にすぐ寝ないように心がけることが大切である。
17 飲食と睡眠
食事は体をつくり、睡眠は気力を回復させる。食事を控えすぎると胃を痛める。長く横になって寝るのは、健康によくない。
食事と睡眠によって健康を得ようとすると、かえって病気になることがある。朝早く起き、夜はふけてから寝る。昼寝をしないで、仕事をさぼらずにこなす。睡眠は短く、食事は少なめにすれば、おのずと健康になるものである。
18 道を楽しむことと長命と
貧しくても、その人が楽しく生活を過ごしているならば、大きな幸福といえる。日本には四季があり、それだけでも楽しく暮らしていけるものである。このように楽しい生活を年多く続けていけば、長命になるのは間違いないであろう。『論語』に「知者の楽しみ、仁者の寿き」という言葉かあるが、それに近づくような生活を行えば、長命になるであろう。
19 心を平静にして徳を養う
穏やかな気もちでいれば、おのずと特がつき、健康になる。しゃべりすぎの人はいつも心が乱れるゆえに、徳をそこない、健康を損なう。徳を損なうということと健康を損なうということは、同じものである。
20 山中の人は長命
山中で暮らしている人は長命である。
山中は寒いので、体の元気を逃がさないようにしないといけないから、長命になる。逆に暖かな地域に住む人は、体の元気を別段にがさなくても暮らしていけるので、短命になる。
山中の人は人々との交際が少ないから、静かに暮らせる。また山の中なので魚や肉をあまり食べることもない。それゆえに長命なのである。
ところが町に住んでいると、人が多く神経を使い、多忙になるゆえ、病気にかかりやすい。また海辺の近くに住んでいると、魚をたくさん食べるので、病気にかかりやすく短命になる。
町の中でも、海辺に住んでいても、欲を抑え魚肉をほどほどにすれば、こういう害もないであろう。
21 心の楽しみを知る
静かに家の中ですごし、古書を読み、詩歌を楽しみ、香をたき、名書を見、山水を眺め、月花を賞し、草木を愛し、四季の変化を楽しみ、酒を少量たしなみ、自家栽培した野菜を煮たりるのは、すべて心を楽しませ気を補うものである。
貧乏であっても、このような楽しみはいつでもできることである。この楽しみを知っている人であれば、財産をたくさん持っていてもこの楽しみを知らない人よりも優れているといえる。
22 忍と養生
自制すれば災いなく、しなければ不幸になる。怒りや欲といったものは抑えなければいけないものだ。
すなわち、自制とは「忍」ということである。
23 胃の気と生命
胃の気というのは元気の別名である。病気であっても胃の気があれば生きるが、胃の気がなければ死んでしまう。
生気ある目をしているものは長生きできるが、ないものは短命である。病人を診察するときは、このことを忘れてはいけない。
24 荘子のたとえ
牛をさばくとき骨と関節の広い隙間に包丁をいれると、包丁の刃は研いだように鋭いままで長く使える。
この話と同じで、世間においても争いごとをさけ理にかなったことをしておけば、世間から非難されず、まわりの世界を広く感じられ、長命でいられるものである。
25 気をへらさない
喜びや楽しみを表面に強く出すと、疲れる。かといって、孤独で憂いや悲しみをもつと、気が滅入ってしまいよくない。
26 気を養う法
騒がず、あわてず、ゆとりをもち、怒ったりせず、大声を上げず、穏やかな気持ちでいて、不平をいって怒らず、悲しみを少なくし、どうすることもできない失敗をくやまず、過失があっても一度反省すれば二度とくやまず、ただ運命にしたがい生きていくことが、心気を養う方法である。
養生を欲する人は、このようなことを忘れてはいけない。
27 唾液は大切に
唾液は身体のうるおいである。血液となる。
草木もうるおいがないと枯れる。それと同じで人にとっても唾液は大切なものである。唾液は内臓から口に出てくる。大切にして吐いてはいけない。つよく吐き出すのは、さらによくない。つよく吐くのは、力が必要であるからである。
28 唾液と痰と
唾液は飲み込むのがよく吐いてはいけない。たんは、吐き出すべきで飲み込んではいけない。たんは紙でとるようにして、つよく吐き出すのはよくない。
飲んだ水や唾液がたんになれば、そのたんは再び唾液にはならない。たんがあるのは、身体によくない。たんを飲み込むのはよくないことである。酒を多く飲めば、たんができる。その結果、唾液がへりたんがふえるのである。
29 病気にあった治療法
何事でも、あせるとよくない結果になることが多い。病気の治療もおなじことである。
病気になったからといって、あわてて医者を選ばずに決めたり、薬を用いたり、針灸をやたらにするのは、よくない。
あんまも、同じでよくない。病気の種類によって適当な治療を受けるべきである。
温泉療法も同じで、かかっている病気とあわない温泉療法はよくない。かえってわるくなり、死んでしまう。
治療をするときは、間違った療法をしないようにしないといけない。
30 養生もまた習慣
善悪とは、毎日の生活の繰り返しにより生まれ出てくる。毎日、つつしみ努力を惜しまなければ、悪となる。
それは養生の道も同じで、いつも欲を抑え慎みをもつことを努力しなければいけない。毎日繰り返せば習慣となり、養生の道も苦痛でなくなる。しかし、毎日なにも行わなければ、養生の道はとてもつらいものになる。
31 みずからの力量を知る
なにごとにおいても、自分の力を知ったうえで行うべきである。自分の力以上のことをすると、無理が出てしまう。すると、病気になる。自分の力量にあったことをするべきである。
32 元気を惜しむ
若いときも、年をいったあとも、健康でいられるよう努力すべきである。若いときは、それだけで健康であるといっても、やはり健康については注意すべきである。
年をいってから健康に気をつけるというのは、お金があるときは散在をし、貧乏になってから節約をすると、いったことであろう。しないよりは、いいかもしれないが、若いうちから健康に注意を払っておくべきであろう。
33 元気を乱費しない
自分の体力をむやみに浪費しないようにする。たとえお金持ちであっても、無駄な浪費をしないと、いうことである。そうすれば、長生きできる。
34 養生の要点は忍耐
養生の要点は、自分に正直であり、かつ我慢もすることである。
たとえば、食事を多くとることは悪である。悪を知らなければ、食事を多くとることを悪とは思わない。悪を知って食事を多くとることは、自分で自分を苦しめる結果になる。正直であるには、悪いことを悪いと理解し、正しい生活をすることである。
35 欲望の日々は自殺への道
生まれつき短命な人は少ない。しかし、養生の方法を知らずにいると、長生きできる人であっても短命に終わる。不老不死に近い人であっても、のどを刀で貫けば、死んでしまうようなものである。
自分の欲望のまま生活を続けている人は、本当の寿命より短い時間しか生きられない。時間の長短こそあれ、これは自殺している行為と同じことである。
36 完全無欠を求めるな
いつも、完全無欠を求めていると疲れるものである。最上を求めるのはしかたないかもしれないが、自分が多少とも気にいることがあれば、それでもいいのではないだろうか。
37 養生の効果を知る
養生の道を知っていれば、それを実行しないということはない。それは、自分にとってよくないことを進んでしない、ということでわかる。人は水の中に入ると溺れることを知っているから、水の中に入らない。炎のなかにはいれば、焼死することを知っているから、炎のなかには入らない。毒を飲めば死ぬことを知っているから、毒は飲まない。それと同じで、養生の道を知っていたなら、体に悪いことをしないということである。つまり養生の道を行うということである。
赤ん坊が、危険なことを知らないゆえに危険なことをすることがある。人もまた、養生の道を知らないから欲のおもむくままに生活をするのである。養生の道を知っていたならば、欲のおもむくままに生活をしたりしないものである。
愚かな人は、自分が不幸になるであろう行動をしていても、その行動について深く考えていないものだ。盗人は、捕まった後のことを考えずに悪いことをする。それと同じことだ。
38 楽しみは養生の根本
人は楽しみを捨ててはいけない。欲を自制するあまり楽しみをなくしてしまうのは、よくない。それは偉大な人たちはみな、楽しみを持っていることでもわかる。
39 畏れと慎みと
食欲、色欲を少なくし、いつも安らいだ気持ちでいて、危険なことを避けて暮らしていれば、長生きできる。たとえお金持ちになったとしても、それ以上に長生きできることのほうが、大事なものである。
40 酒は微酔、花は半開
なにもかも充足してしまう状態になったときは、心配ごとが生まれる兆候たど思っていい。酒もほろ酔い具合が一番楽しいときである。花も満開になる前が見時である。満開になれば、あとは散るのを待つだけだからである。
41 一時の我慢
一時の浮気であっても、人生を破壊することがある。少しだけなら、と思っていてもとても大きな害を生むことがある。
42 過不足のない中を守る
中道を行くことが大事だ。たとえば、食事も腹八分目がいいように、すべてのこともそうあるべきだ。
43 ゆったりとした心
常に平穏な気持ちでいることがよい。言葉が多く無駄口が多いのは、よくない。これは養生の最上の方法である。
44 動と静との養生
人は精神の力を持って生きている。精神力を保つには、心を平静にし、適度な運動を行って血行をよくするといい。
45 大風雨と雷に対して
大風雨や激しい雷のときは、たとえ夜であっても衣服を整えて起きていなければいけない。横になっていてはいけない。いざというときに動けないからである。
46 客としての心得
よその家に行ったときは、あまり長居しないのがいい。夕方には帰るほうがいい。よる遅くまで滞在すると、相手も自分も疲れるからである。
47 気から百病生ず
「病は気から」ともいわれる。怒ったり、喜んだり、悲しんだり、恐れたり、寒かったり、暑かったり、驚いたり、苦労すれば、気持ちが乱れる。それで病気になる。
そのために、気を大事するために、心を平静にして、からだを適度に動かして血気を循環させることが必要である。
48 丹田に気を集める
人の生命を司る気というものは、腹の奥深くに集めるのがいい。そうすれば、何がおこっても慌てず落ち着いた気持ちで対応できるからである。
特に大事なことを処理する人には、この術が必要である。そうすれば、力を十分に発揮できるからである。
49 七情と養生
感情とは、「喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲」である。また医学的に感情とは、「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」である。欲とは、「耳・目・口・鼻・身・意」である。怒と欲は、人にとってあまりよくない感情だ。怒りとは炎のように人を焦がし、欲とは深い海ように底がなく人を冷たくする。どちらも気をつけなければいけない感情である。
50 養生の要訣と十二少
養生の秘訣とは、すべてのことがらに対して、控えめにすることである。自分には手に負えないことを続けて無理をするよりも、余裕をもち行動するほうが、からだにとってはいいからだ。
自分の欲望も、おさえて暮らすほうがいい。
51 養生の四大要
欲を少なくし、環境から身を守り、身体を適度に動かし、睡眠を控えること。この4つが養生の大要である。
52 気を養う術
穏やかな気持ちでいて、決して動揺してはいけない。落ち着いていて、むやみに気を動転させてはいけない。ゆっくりして、慌ててはいけない。口数を少なくして、気をあまり使わない。たえず、体の力を腹の下にためておく。これらが、気を養う術である。
53 気の循環
歌を歌い、舞踏を舞うことは、気を養い血行をよくする。これらは、養生の道である。今日のあんまと言われるものも、この一種であるといえる。
54 養生の四寡
心配事を少なくし、欲を抑え、飲食を控えて胃を守り、言葉少なくすることは、養生の四寡という。
55 養生の七養
言葉を少なくし内部に力をためる。色欲を控え精気を養う。味の濃いものは食べず、血気を安定させる。唾液を飲み、内蔵を休める。怒りを抑え、腹を立てない。飲食を控え、胃を休める。心配事はしない。これらは、養生の七養という。
56 修養の五宜
髪は多く切るのがいい?。手は顔に当てる。歯はしばらくたたくのがいい。唾液は常に飲むのがいい。騒がず、静かにしているのがいい。これを修養の五宜と孫真人はいう。
57 同じ状態をつづけるな
長時間歩き、長い時間すわり、横になり、語りつづけてはいけない。長時間、行動をすると気が減るからである。長い時間遊ぶと、気がふさがりよくない。
58 養生の四要
養生の四要は、「怒らず、心配せず、口数を少なくし、欲を少なくする」ことである。
59 四損と養生
遠くにつばを飛ばすと気がへる。。多く寝ると神経が弱まる。多く汗をかくと、血が悪くなる。病になると体力が弱まる。これを四損という。
60 老人の痰
老人は痰に苦しむが、痰きりの強い薬を使い、すべて痰を出してしまうのはよくない。昔からの言い伝えである。
61 呼と吸と
呼吸は、鼻からたえず出入りしている息のことである。呼吸をしなければ人は死んでしまう。体の外の空気と体内の空気は同じものである。しかし体の中に入った空気は汚れる。それを外の清らかな空気と入れ替えているのが呼吸である。たまに大きく空気を吸い込むといい。しかし、急に吐き出すのはよくない。
62 『千金方』の呼吸法
鼻から息を吸い込み、口より吐き出す。入る空気を多くし、でるのは少なくする。(できるのか?)出すときは、口を細く開き、少しずつ出す。
63 呼吸はゆっくりと
いつも呼吸はゆっくりとする。そして体の奥にまで届くような気持ちで吸い込む。急いで呼吸してはいけない。
64 調息法
呼吸を整え、静かにしていると、息が次第に少なくなる。これを繰り返すと、息遣いがないようになる。ただ腹の中からかすかな息をしているのを感じるだけになる。かくして神のごとくなる。これが気を養う術である。呼吸は体内の気の通路であるから、荒荒しくしてはいけない。
65 心の養生と身体の養生
心を落ち着け、怒りを抑え欲を少なくし、いつも楽しみ心配事をなくす。これが心を守る術であり、養生の術である。これは特別な術でなく、養生の術である。
66 夜ふかしの害
夜、本を読んだり人と話し合ったりするのは、12時までとしないといけない。深夜まで起きていると、神経が高ぶり静まらなくなるからである。
67 環境を清潔に
身の回りを清潔にしておけば、体のなかもきれいになる。それゆえに、居間はいつも埃を取り除き、庭もきれいに整備しておくことである。机の上も整理して埃をなくす。そうすれば、心も清らかになり、身体の運動も行うことができる。みんな養生の助けとなることである。
68 天地陰陽について
世界の仕組みでいうと、陽が一で陰が二である。水は多く火は少ない。水気は乾きにくく、火は消えやすい。人間は陽に属し少ない。鳥獣虫魚は陰に属し多い。
いい人は少なく陽である。小賢しい人は多く陰である。善はすくなく、悪は多い。
暑いとき水は多く、寒いときは少ない。これは春夏は陽が多いので水が増える。秋冬は陽が少なく水も少ない。これは、陽が多いときは陰もそれに従い増えるということである。吐血、刀傷、産後の出血のとき、血を補うと人は死ぬ。血ではなく気を養えば、自然に血が増える。
血は多いので陰である。それをたくさん補うと体は死んでしまう。気は少ないので陽であり、これを増やさないといけない。
毒を使うと、陽が減る。昔の医者が、陰を増やすのがいいと言ったこともあるが、それは間違いである。
巻第二 総論 下 終わり
巻第二 総論 下
1 食後の養生法
朝は早起きをし、手と顔を洗い髪を整え、便所にいき、食後は腹をなでおろし消化を助けるのがいい。さらに、第十二助骨部の部分を人差し指の内側ですじかいに、繰り返してなでるのがよい。
ついで腰をなでおろし、その下部を静かにたたくこと。強くたたいてはいけない。もし食べ物が胸につかえたときは、上を向いて2・3度ばかりげっぷを試みると効果的である。
朝夕の食事の後は、長く座っていてはいけない。さらに横になって寝るのはもっとよくない。長く眠れば、気をふさいでしまい病気になり、それを続けると短命になる。食後は300歩ほど歩くのがよい。時にはもう少し長く歩くとさらに、よい。
2 労働の大切さ
家にいるときは、自分の体力にあった労働をするのがいい。立ったり座ったりする動作にかかわらず、部屋の中ですることは、なるべく自分で行うのがよい。そうすれば、人を使うときの気を使わずにすむし、自分の行いたいことを正確に行うことができる。
常に体をうごかすようにしておけば、気と血液がよく循環し、食物もよく消化するので、病気にならない。しかし、無理をするほど動き回ったりするのは、疲れるのでよくない。自分にあった適度な運動をするのが一番よい。
3 働くことは養生の道
人の体は、時々運動をし、手足を働かせ、よく歩き、同じ場所に長時間すわらないようにすれば、健康でいられるものだ。
流水はくさらないが、たまり水はくさる。開き戸の開閉する軸は虫は食わない。つまり常に動いているものは、悪くなりにくいものであるということである。
人の体も同じで、同じ場所に長時間すわったり、食後にすぐに寝てしまうと、病気になりやすいのだ。養生の道とは、こういうことをしないことだ。
4 『千金方』の養生法
『千金要方』での養生の道は、「久しく行き、久しく坐し、久しく臥し、久しく視る」ことは禁物であるといっている。
長く行くこと?、長く座ること、長く横になること、長く契る?ことはよくないということである。
5 寝る時間を少なくする
食後、すぐに寝るのはよくない。昼間に寝るのはもっとよくない。病気の原因になる。もし、とても疲れていて昼寝をするときは、短い時間にすべきである。
6 昼寝の禁止
日の長い季節になっても昼寝をしてはいけない。人によってはその季節になると、日が沈めばすぐに眠くなるかもしれない。そういう人は夕食のあと軽い運動をしたり、散歩をしたりして防ぐのがよい。眠らなくても横になっているのもよくない。夕方の時間は起きていなければいけない。
こうすれば、夜になっても起きていられる。できれば、夕方の時間に横にならないのが一番よい。
7 過信の戒め
養生の道は頼む心を戒めている。
自分の体が丈夫だから、若いから、病気がよくなったからといって、気を許してしまえば、健康の道から外れてしまう。刃のするどいもので硬いものを切ると刃こぼれするように、自分の内臓が強いといって飲食や色欲に油断をすれば、病気になってしまうということである。
8 小欲をすてよ
宝石をスズメに投げて得ようとすることは、ばかげている。それと、同じで人の一番の大事な健康をかえりみずに生活をし、病気になるということは、小石のかわりに宝石を使ってスズメを得ようとしていることとかわりないことである。
9 心は楽しく身は労働
人は悩み事をもたず、毎日からだを動かし働いているのがよい。休みすぎで、好きなものを食べ、酒を飲み、色を好み、体を休めすぎていると、かえって健康にはよくない。
病気でもないのに、栄養剤や薬を飲むのもよくない。子供をあまやかしすぎると、子供本人にとってもよくないことと、同じことである。
10 長命と短命
長命と短命を決めるのは、人の生き方による。自分の思うがままの生活をつづければ、健康を損ない短命になる。逆に節度をもった生活を続ければ長命でいられる。
11 予防の必要性
将来の問題に対して悩むことは、問題が起きる前に手立てを考えるということである。将来のことを思えば今の生活のことを慎重に考えて暮らすことが大事である。
12 酒食・色欲を慎む
酒色、色欲のおぼれていても、その楽しみをすべて味わう前に人の体のほうが、滅んでしまうものだ。
13 元気を養う
人の生命力というのは、使えば減るし、増やす努力をすれば増える。このバランスがマイナスなら、どんどんと生命力が少なくなり病気になりやがて死ぬであろう。多くの人は、増やす努力もしないから短命で終わってしまう。生命力とは限りあるものだから、限りのない欲望にそれを使うのは間違っている。
14 慎みは健康のもと
一生を平穏に過ごすためには、人は毎日の生活を振り返り悪いことを止め、無理な生活をしないで暮らせば、達せられる。
15 はじめの自制
楽しいことを続けていれば、必ずあとでつらいめにあう。楽しく生活するために努力をしてから楽しむべきであろう。
16 養生法の要点
養生の道は他言を必要としない。
実行することは、大食せず、体に悪いものを食べず、色欲をおさえ、悩み事をなくすことである。
心を平静にし、言葉を少なくし、まわりの環境に合わせた生活をし、適度な運動を行い、食後にすぐ寝ないように心がけることが大切である。
17 飲食と睡眠
食事は体をつくり、睡眠は気力を回復させる。食事を控えすぎると胃を痛める。長く横になって寝るのは、健康によくない。
食事と睡眠によって健康を得ようとすると、かえって病気になることがある。朝早く起き、夜はふけてから寝る。昼寝をしないで、仕事をさぼらずにこなす。睡眠は短く、食事は少なめにすれば、おのずと健康になるものである。
18 道を楽しむことと長命と
貧しくても、その人が楽しく生活を過ごしているならば、大きな幸福といえる。日本には四季があり、それだけでも楽しく暮らしていけるものである。このように楽しい生活を年多く続けていけば、長命になるのは間違いないであろう。『論語』に「知者の楽しみ、仁者の寿き」という言葉かあるが、それに近づくような生活を行えば、長命になるであろう。
19 心を平静にして徳を養う
穏やかな気もちでいれば、おのずと特がつき、健康になる。しゃべりすぎの人はいつも心が乱れるゆえに、徳をそこない、健康を損なう。徳を損なうということと健康を損なうということは、同じものである。
20 山中の人は長命
山中で暮らしている人は長命である。
山中は寒いので、体の元気を逃がさないようにしないといけないから、長命になる。逆に暖かな地域に住む人は、体の元気を別段にがさなくても暮らしていけるので、短命になる。
山中の人は人々との交際が少ないから、静かに暮らせる。また山の中なので魚や肉をあまり食べることもない。それゆえに長命なのである。
ところが町に住んでいると、人が多く神経を使い、多忙になるゆえ、病気にかかりやすい。また海辺の近くに住んでいると、魚をたくさん食べるので、病気にかかりやすく短命になる。
町の中でも、海辺に住んでいても、欲を抑え魚肉をほどほどにすれば、こういう害もないであろう。
21 心の楽しみを知る
静かに家の中ですごし、古書を読み、詩歌を楽しみ、香をたき、名書を見、山水を眺め、月花を賞し、草木を愛し、四季の変化を楽しみ、酒を少量たしなみ、自家栽培した野菜を煮たりるのは、すべて心を楽しませ気を補うものである。
貧乏であっても、このような楽しみはいつでもできることである。この楽しみを知っている人であれば、財産をたくさん持っていてもこの楽しみを知らない人よりも優れているといえる。
22 忍と養生
自制すれば災いなく、しなければ不幸になる。怒りや欲といったものは抑えなければいけないものだ。
すなわち、自制とは「忍」ということである。
23 胃の気と生命
胃の気というのは元気の別名である。病気であっても胃の気があれば生きるが、胃の気がなければ死んでしまう。
生気ある目をしているものは長生きできるが、ないものは短命である。病人を診察するときは、このことを忘れてはいけない。
24 荘子のたとえ
牛をさばくとき骨と関節の広い隙間に包丁をいれると、包丁の刃は研いだように鋭いままで長く使える。
この話と同じで、世間においても争いごとをさけ理にかなったことをしておけば、世間から非難されず、まわりの世界を広く感じられ、長命でいられるものである。
25 気をへらさない
喜びや楽しみを表面に強く出すと、疲れる。かといって、孤独で憂いや悲しみをもつと、気が滅入ってしまいよくない。
26 気を養う法
騒がず、あわてず、ゆとりをもち、怒ったりせず、大声を上げず、穏やかな気持ちでいて、不平をいって怒らず、悲しみを少なくし、どうすることもできない失敗をくやまず、過失があっても一度反省すれば二度とくやまず、ただ運命にしたがい生きていくことが、心気を養う方法である。
養生を欲する人は、このようなことを忘れてはいけない。
27 唾液は大切に
唾液は身体のうるおいである。血液となる。
草木もうるおいがないと枯れる。それと同じで人にとっても唾液は大切なものである。唾液は内臓から口に出てくる。大切にして吐いてはいけない。つよく吐き出すのは、さらによくない。つよく吐くのは、力が必要であるからである。
28 唾液と痰と
唾液は飲み込むのがよく吐いてはいけない。たんは、吐き出すべきで飲み込んではいけない。たんは紙でとるようにして、つよく吐き出すのはよくない。
飲んだ水や唾液がたんになれば、そのたんは再び唾液にはならない。たんがあるのは、身体によくない。たんを飲み込むのはよくないことである。酒を多く飲めば、たんができる。その結果、唾液がへりたんがふえるのである。
29 病気にあった治療法
何事でも、あせるとよくない結果になることが多い。病気の治療もおなじことである。
病気になったからといって、あわてて医者を選ばずに決めたり、薬を用いたり、針灸をやたらにするのは、よくない。
あんまも、同じでよくない。病気の種類によって適当な治療を受けるべきである。
温泉療法も同じで、かかっている病気とあわない温泉療法はよくない。かえってわるくなり、死んでしまう。
治療をするときは、間違った療法をしないようにしないといけない。
30 養生もまた習慣
善悪とは、毎日の生活の繰り返しにより生まれ出てくる。毎日、つつしみ努力を惜しまなければ、悪となる。
それは養生の道も同じで、いつも欲を抑え慎みをもつことを努力しなければいけない。毎日繰り返せば習慣となり、養生の道も苦痛でなくなる。しかし、毎日なにも行わなければ、養生の道はとてもつらいものになる。
31 みずからの力量を知る
なにごとにおいても、自分の力を知ったうえで行うべきである。自分の力以上のことをすると、無理が出てしまう。すると、病気になる。自分の力量にあったことをするべきである。
32 元気を惜しむ
若いときも、年をいったあとも、健康でいられるよう努力すべきである。若いときは、それだけで健康であるといっても、やはり健康については注意すべきである。
年をいってから健康に気をつけるというのは、お金があるときは散在をし、貧乏になってから節約をすると、いったことであろう。しないよりは、いいかもしれないが、若いうちから健康に注意を払っておくべきであろう。
33 元気を乱費しない
自分の体力をむやみに浪費しないようにする。たとえお金持ちであっても、無駄な浪費をしないと、いうことである。そうすれば、長生きできる。
34 養生の要点は忍耐
養生の要点は、自分に正直であり、かつ我慢もすることである。
たとえば、食事を多くとることは悪である。悪を知らなければ、食事を多くとることを悪とは思わない。悪を知って食事を多くとることは、自分で自分を苦しめる結果になる。正直であるには、悪いことを悪いと理解し、正しい生活をすることである。
35 欲望の日々は自殺への道
生まれつき短命な人は少ない。しかし、養生の方法を知らずにいると、長生きできる人であっても短命に終わる。不老不死に近い人であっても、のどを刀で貫けば、死んでしまうようなものである。
自分の欲望のまま生活を続けている人は、本当の寿命より短い時間しか生きられない。時間の長短こそあれ、これは自殺している行為と同じことである。
36 完全無欠を求めるな
いつも、完全無欠を求めていると疲れるものである。最上を求めるのはしかたないかもしれないが、自分が多少とも気にいることがあれば、それでもいいのではないだろうか。
37 養生の効果を知る
養生の道を知っていれば、それを実行しないということはない。それは、自分にとってよくないことを進んでしない、ということでわかる。人は水の中に入ると溺れることを知っているから、水の中に入らない。炎のなかにはいれば、焼死することを知っているから、炎のなかには入らない。毒を飲めば死ぬことを知っているから、毒は飲まない。それと同じで、養生の道を知っていたなら、体に悪いことをしないということである。つまり養生の道を行うということである。
赤ん坊が、危険なことを知らないゆえに危険なことをすることがある。人もまた、養生の道を知らないから欲のおもむくままに生活をするのである。養生の道を知っていたならば、欲のおもむくままに生活をしたりしないものである。
愚かな人は、自分が不幸になるであろう行動をしていても、その行動について深く考えていないものだ。盗人は、捕まった後のことを考えずに悪いことをする。それと同じことだ。
38 楽しみは養生の根本
人は楽しみを捨ててはいけない。欲を自制するあまり楽しみをなくしてしまうのは、よくない。それは偉大な人たちはみな、楽しみを持っていることでもわかる。
39 畏れと慎みと
食欲、色欲を少なくし、いつも安らいだ気持ちでいて、危険なことを避けて暮らしていれば、長生きできる。たとえお金持ちになったとしても、それ以上に長生きできることのほうが、大事なものである。
40 酒は微酔、花は半開
なにもかも充足してしまう状態になったときは、心配ごとが生まれる兆候たど思っていい。酒もほろ酔い具合が一番楽しいときである。花も満開になる前が見時である。満開になれば、あとは散るのを待つだけだからである。
41 一時の我慢
一時の浮気であっても、人生を破壊することがある。少しだけなら、と思っていてもとても大きな害を生むことがある。
42 過不足のない中を守る
中道を行くことが大事だ。たとえば、食事も腹八分目がいいように、すべてのこともそうあるべきだ。
43 ゆったりとした心
常に平穏な気持ちでいることがよい。言葉が多く無駄口が多いのは、よくない。これは養生の最上の方法である。
44 動と静との養生
人は精神の力を持って生きている。精神力を保つには、心を平静にし、適度な運動を行って血行をよくするといい。
45 大風雨と雷に対して
大風雨や激しい雷のときは、たとえ夜であっても衣服を整えて起きていなければいけない。横になっていてはいけない。いざというときに動けないからである。
46 客としての心得
よその家に行ったときは、あまり長居しないのがいい。夕方には帰るほうがいい。よる遅くまで滞在すると、相手も自分も疲れるからである。
47 気から百病生ず
「病は気から」ともいわれる。怒ったり、喜んだり、悲しんだり、恐れたり、寒かったり、暑かったり、驚いたり、苦労すれば、気持ちが乱れる。それで病気になる。
そのために、気を大事するために、心を平静にして、からだを適度に動かして血気を循環させることが必要である。
48 丹田に気を集める
人の生命を司る気というものは、腹の奥深くに集めるのがいい。そうすれば、何がおこっても慌てず落ち着いた気持ちで対応できるからである。
特に大事なことを処理する人には、この術が必要である。そうすれば、力を十分に発揮できるからである。
49 七情と養生
感情とは、「喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲」である。また医学的に感情とは、「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」である。欲とは、「耳・目・口・鼻・身・意」である。怒と欲は、人にとってあまりよくない感情だ。怒りとは炎のように人を焦がし、欲とは深い海ように底がなく人を冷たくする。どちらも気をつけなければいけない感情である。
50 養生の要訣と十二少
養生の秘訣とは、すべてのことがらに対して、控えめにすることである。自分には手に負えないことを続けて無理をするよりも、余裕をもち行動するほうが、からだにとってはいいからだ。
自分の欲望も、おさえて暮らすほうがいい。
51 養生の四大要
欲を少なくし、環境から身を守り、身体を適度に動かし、睡眠を控えること。この4つが養生の大要である。
52 気を養う術
穏やかな気持ちでいて、決して動揺してはいけない。落ち着いていて、むやみに気を動転させてはいけない。ゆっくりして、慌ててはいけない。口数を少なくして、気をあまり使わない。たえず、体の力を腹の下にためておく。これらが、気を養う術である。
53 気の循環
歌を歌い、舞踏を舞うことは、気を養い血行をよくする。これらは、養生の道である。今日のあんまと言われるものも、この一種であるといえる。
54 養生の四寡
心配事を少なくし、欲を抑え、飲食を控えて胃を守り、言葉少なくすることは、養生の四寡という。
55 養生の七養
言葉を少なくし内部に力をためる。色欲を控え精気を養う。味の濃いものは食べず、血気を安定させる。唾液を飲み、内蔵を休める。怒りを抑え、腹を立てない。飲食を控え、胃を休める。心配事はしない。これらは、養生の七養という。
56 修養の五宜
髪は多く切るのがいい?。手は顔に当てる。歯はしばらくたたくのがいい。唾液は常に飲むのがいい。騒がず、静かにしているのがいい。これを修養の五宜と孫真人はいう。
57 同じ状態をつづけるな
長時間歩き、長い時間すわり、横になり、語りつづけてはいけない。長時間、行動をすると気が減るからである。長い時間遊ぶと、気がふさがりよくない。
58 養生の四要
養生の四要は、「怒らず、心配せず、口数を少なくし、欲を少なくする」ことである。
59 四損と養生
遠くにつばを飛ばすと気がへる。。多く寝ると神経が弱まる。多く汗をかくと、血が悪くなる。病になると体力が弱まる。これを四損という。
60 老人の痰
老人は痰に苦しむが、痰きりの強い薬を使い、すべて痰を出してしまうのはよくない。昔からの言い伝えである。
61 呼と吸と
呼吸は、鼻からたえず出入りしている息のことである。呼吸をしなければ人は死んでしまう。体の外の空気と体内の空気は同じものである。しかし体の中に入った空気は汚れる。それを外の清らかな空気と入れ替えているのが呼吸である。たまに大きく空気を吸い込むといい。しかし、急に吐き出すのはよくない。
62 『千金方』の呼吸法
鼻から息を吸い込み、口より吐き出す。入る空気を多くし、でるのは少なくする。(できるのか?)出すときは、口を細く開き、少しずつ出す。
63 呼吸はゆっくりと
いつも呼吸はゆっくりとする。そして体の奥にまで届くような気持ちで吸い込む。急いで呼吸してはいけない。
64 調息法
呼吸を整え、静かにしていると、息が次第に少なくなる。これを繰り返すと、息遣いがないようになる。ただ腹の中からかすかな息をしているのを感じるだけになる。かくして神のごとくなる。これが気を養う術である。呼吸は体内の気の通路であるから、荒荒しくしてはいけない。
65 心の養生と身体の養生
心を落ち着け、怒りを抑え欲を少なくし、いつも楽しみ心配事をなくす。これが心を守る術であり、養生の術である。これは特別な術でなく、養生の術である。
66 夜ふかしの害
夜、本を読んだり人と話し合ったりするのは、12時までとしないといけない。深夜まで起きていると、神経が高ぶり静まらなくなるからである。
67 環境を清潔に
身の回りを清潔にしておけば、体のなかもきれいになる。それゆえに、居間はいつも埃を取り除き、庭もきれいに整備しておくことである。机の上も整理して埃をなくす。そうすれば、心も清らかになり、身体の運動も行うことができる。みんな養生の助けとなることである。
68 天地陰陽について
世界の仕組みでいうと、陽が一で陰が二である。水は多く火は少ない。水気は乾きにくく、火は消えやすい。人間は陽に属し少ない。鳥獣虫魚は陰に属し多い。
いい人は少なく陽である。小賢しい人は多く陰である。善はすくなく、悪は多い。
暑いとき水は多く、寒いときは少ない。これは春夏は陽が多いので水が増える。秋冬は陽が少なく水も少ない。これは、陽が多いときは陰もそれに従い増えるということである。吐血、刀傷、産後の出血のとき、血を補うと人は死ぬ。血ではなく気を養えば、自然に血が増える。
血は多いので陰である。それをたくさん補うと体は死んでしまう。気は少ないので陽であり、これを増やさないといけない。
毒を使うと、陽が減る。昔の医者が、陰を増やすのがいいと言ったこともあるが、それは間違いである。

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