巻第三 飲食 上
1 元気は生命のもと、飲食はその養い
人とは、天と地から生まれてきた。しかし、人が元気に生きていくには飲食により養分を毎日とらなければいけない。たとえ、半日でも飲食をぬかすことはよくない。
でも、飲食とは欲望の一つである。欲望のおもむくままに飲食を続けることは、胃腸によくない。度を過ぎれば、生命にもかかわることである。
胃腸から取り込まれた養分が、身体を養っている。草木が土のなかの栄養を取り込み生きているのと同じ事である。養生の道とは、胃腸を整えることが第一である。
2 病いは口から
人は毎日のように食事をする。食事とは楽しいものであるが、度をすぎるほど取りすぎることはよくない。口から出し入れするものには、注意が必要ある。
3 聖人の飲食
聖人の飲食の法とは養生の要点である。
4 熱飲、冷飲をさける
ご飯はよく火を通し中まで柔らかくなったものがいい。堅いものや粘っこいものはよくない。そして温かいうちに食べるのがいい。吸い物も熱いうちがよい。
酒は夏でも温めて飲むのがいい。冷酒は体によくない。冬は熱燗がよくない。気が上ってよくないからである。
5 飯のたき方
ご飯の炊きかたにも、いろいろある。健康な人には普通に炊く。胃痙攣をおこしている人には、たいたご飯に湯を入れて二度炊きするのがいい。胃腸の弱い人に は、水を多めにして炊くのがいい。粘っこいのは気をふさぐのでよくない。堅いのは消化しにくいのでよくない。新米は米の気が強く、体が弱っている人にはよ くない。早稲(早く成熟する稲)は、病人にはよくない。奥稲(おそく成熟する稲?)は性分が軽いのでよい。
6 淡薄なものを食べる
すべての食事はあっさりしたうす味のものがよい。濃い味や脂っこいものをたくさん食べてはいけない。生もの、冷えたもの、堅いものは禁物である。吸物は一椀、肉料理は一品、副食は一、二品にとどめる。
肉はたくさん食べてはいけない。生肉は続けて食べてはいけない。吸物に肉を入れたときは、副食に肉類をいれないほうがいい。
7 飲食はひかえめに
飲食は人が生きていくために必要なものである。でも必要以上にむさぼってはいけない。食欲を抑えることも必要である。
食べ過ぎてしまい、そのために胃腸薬を服用すると、胃の本来の働きが弱くなってしまう。
食欲を抑えるには、精神力が必要だ。病気になることを怖れることを忘れないようにしなければいけない。
8 満腹をさける
おいしいものであっても、たくさん食べてはいけない。少しだけ食べても、たくさん食べても、そのおいしさを堪能するという点ではあまり変わらないからである。
おいしいと言ってたくさん食べると、健康を損ない後で苦しむことになる。それゆえに、はじめから節度をもって食事を取ることを心がけなければいけない。腹八分目がいいのである。
9 五味偏勝をさける
五味偏勝というのは、同じ味のものを食べ過ぎることをいう。
甘いものを続けて食べると、腹が張ってしまい痛む。
辛いものを食べ過ぎると、血が上り、湿疹ができ、眼も悪くする。
塩辛いものを多く取ると、血がかわき、喉か渇き、湯水を多く飲むようになり、湿疹ができ、胃腸を弱めてしまう。
苦いものを多く取ると、胃腸の調子を狂わす。
それゆえに、いろんな味をまんべんなく食べることが病気にかからないこつである。
10 食物の選択
食物とは、身体を養うものである。それゆえに、たとえおいしいものでも、体に害があるものは食べてはいけない。体を温めるものは良く、体を冷やすものは良くない。生ものや辛いもの、ひどく熱いものも良くない。
11 飯の多食は不可
ご飯は人に力を、よく与えてくれる。と、同時に害もある。ご飯は消化しにくいので、たくさん食べると胃腸に負担がかかる。ほかのものを多く食べ過ぎるよりも、よくない。
よその家に行き、ご飯を食べさせてもらうときでも、言われるままにたくさん食べることをさけ、少しずつ食べるようにすると、相手方にも悪い印象を与えなくてすむ。
ご飯をいつもと同じくらいにしても、ほかのものをたくさん食べると健康には悪い。ご飯を食べた後、茶菓子やもち、麺類を食べると胃腸に負担がかかる。
もし、食後のあとになにか食べることがあるときは、最初のご飯を少量にすべきである。
12 口腹の欲をおさえる
食事のことばかり気にかけている人は卑しい人である。小さなことを大事にして大きなことを大事にしないことと同じであろうから。
食い意地ばかりはっていると、病気にもなるし、酒乱ともなると卑しさ大爆発といったところです。
13 夜食の法
夜に食事をとる人は、なるべく夜の早い時間にとるのがいい。そうしないと、寝るまでに消化しきれない。
夜に食事をしない人も、食事のあとすぐに寝るのはよくない。腹が減っても、夜は仕事をするときではないから、害はないであろう。
酒も同じで、夜は飲まないのがいい。飲むとしても早い時間に少しだけ飲むのがいいだろう。
と、いっても現代は夜の生活も重要であるから、重々気をつける方がいいだろう。
14 食と栄養と
食事を制限しすぎると、栄養不足になると言う人がいる。しかし食事は人の欲望であるから少しくらい制限しすぎるほうが、いいのである。
15 適量を守る
好きな食事が出てきたとき、または空腹時においしく珍しい食事が出てきたとき、または種類多くの品数の料理が出てきても、食欲に負け度を越すほど食べないよう、心がけなければいけない。
16 腹七、八分の飲食
食べ物を見ると人は食欲がわく。それで、つい食べ過ぎてしまうものだ。腹七、八分くらいで食事を抑えておいても、しばらくすれば腹は十分になる。腹いっぱい食べると、あとで腹が張り病気になる。
17 過酒食
食べ過ぎたり酒を飲む過ぎてしまったときに、薬を用いて消化を助けるという行為は、味方の犠牲をいとわない戦いをしないと勝利できない戦争の状況であると いえる。胃腸がその戦場であるということは、胃腸にとってつらいものである。それゆえに胃腸の戦場を持ち込まないためにも、薬を飲まなければいけない状況 をつくらないように心がけなければいけない。
18 五思
食事をするときに考えなければいけないことが5つある。
一つは、誰から食事を与えられているかである。父や上司、兄弟や親類、あるいは他人から与えられているかもしれない。それらの人には感謝の気持ちを忘れてはいけない。自力で食物を得ているものも、自分のすんでいる国にたいして恩を忘れてはいけない。
二つは、食物は農民が作り出してくれたことを感謝しないといけない。自分で食物を作り出していないものは、特にそうである。
三つは、自分がなにも貢献をしていないときに食事を取ることがあるときは、とても幸福であることを忘れてはいけない。
四つは、自分の食事よりも貧しい食事をしている人がいることを忘れてはいけない。自分が餓死しないで生きていることを感謝しないといけない。
五つは、昔の人は米、麦、粟、豆、黍を食べることができないために草木の実や根や葉を食べていたのに、今ではそれらを食べることができることを感謝しない といけない。また、火を使い温かい食事をとれることも感謝しないといけない。味もよく、胃腸にもやさしい食事がとれることも感謝しないといけない。(なん か、すごく古い時代の話です。)
今の時代はとてもいいものである。これらの五つのうち、二つくらいでいいから、食事をするときは思い出してほしいものである。
19 夕食は軽く
夕食は朝食より消化しにくいものである。だから夕食は少なめにするほうがいい。味もあっさりしたもので、副食品も多いのはいけない。
魚や鳥など味がこく、脂肪が多いものは夕食に悪い。菜類、山芋、人参、白菜、芋、くわい(オモダカ科の水生多年草、水田で栽培をし地下の球根を食べる。冬から春にかけて収穫できる。)などは、胃腸によくないから夕食に多く食べてはいけない。食べなければ、そのほうがいい。
20 食べてはいけない食物
すえた臭いのするご飯、古い魚、ふやけた肉、色香のよくないもの、よくない臭いのするもの、煮てから長い時間がたったものは食べてはいけない。また間食はよくない。
早すぎて熟していないもの、成熟していないものの根を掘り出して食べることや、時期がすぎて盛りを失ったものは、いわゆる時ならぬものであるから食べてはいけない。
聖人といわれる人は、このようなものを決して食べなかった。
食事はご飯を中心にして、ご飯以外のものをご飯以上に食べることは体によくない。
21 副食は少なめに
飲食のうちで、ご飯を十分に食べないと飢えはいやせない。吸物はご飯を食べやすくするだけである。肉は少しだけで十分である。少しの量で食欲を刺激するく らいでいい。野菜は穀物や肉類ではとれない栄養分を補い消化を助ける。すべての食品にはすべて意味があるものだ。しかし、食べ過ぎはよくない。
22 穀物と肉類
人というのは、元気というものをもって成り立っている。元気は、穀物の栄養分によって生まれる。穀物や肉類によって元気をつくりだしているのである。でも多食して元気をなくしてはいけない。元気が穀物に勝てば長生きできる。
23 飲食の量
胃腸の弱い人、特に老人は食事により病気になりやすい。おいしい料理が出てきても、我慢することが大事である。度をすぎた食事をしてはいけない。食欲に勝てないのなら、勝てるように精神力を鍛えなければいけない。
24 宴の飲食もひかえめに
友人たちと会食すると、ついおいしいものを食べ過ぎることがある。食べ過ぎてしまうことは、健康のうえではよくないことである。
「花は半開に見、酒は微酔にのむ」といわれる言葉があるがこれを実行するのがよい。欲望のまま過ごすことは不幸のもとになる。楽しみの絶頂は悲劇のもとになることが多い。
25 持病と食べもの
食品により体に害があるものはすべてメモを取っておき、その食品は二度と食べないようにする。時間がたってから害を及ぼすものもあるが、これも食べてはいけない。
26 食当たりと絶食
食中りをおこしたときは、絶食をするのがよい。あるいは、食べる量を半分または3分の2に減らすとよい。
食べ過ぎた場合は、すぐに入浴するとよい。
魚や鳥の肉、魚や鳥の干物、生野菜、油っこいもの、ねばっこいもの、堅いもの、もちやだんご、そして菓子類などを食べてはいけない。
27 消化不良と朝食ぬき
朝食が十分に消化しないうちに昼食をとってはいけない。茶菓子なども食べてはいけない。昼食が消化しないうちに夜食をとってはいけない。昨夜食べたものが消化しきらないときは、朝食は抜かせばよい。もしくは半分にするか、酒や肉類をとらなければいい。
食中りをおこしたときは、まず絶食がいい。軽い食中りなら、薬を飲まなくても治るであろう。
養生の術を知らない人は食中りになっても粘っこい米湯などを摂取することがあるが、体に害になるからとってはいけない。食中りの人は、二三日絶食しても、 それほど害にはなることはない。(ただし水気を完全に断つのはよくない。)顔が食中りで膨れているからである。(あまり関係ないかもしれない。)
28 煮ものの味
煮すぎたものや、煮きらないものは食べてはいけない。魚を煮るときは十分に煮なければいけない。煮すぎて味を失ったものは、胸にのこりやすい。程よく煮るのがこつである。
蒸した魚は時間が長くなっても味を失わない。魚を多くの水で煮ると味をなくしてしまう。
29 調味料のこと
聖人は食にあった醤(もろみのことではない。塩辛・佃煮のことかも?)がないと召し上がらなかったという。醤とは調味料のことである。
具体的に例をあげると塩、酒、醤油、酢、蓼(「だて」、イヌタデ・ハナタデ・ヤナギタデなどの植物の総称、辛みのある食用の植物のこと)、生姜、わさび、 胡椒、芥子、山椒などそれぞれの食物にあう調味料がある。これを食物の中にいれるのは、味を調えるばかりでなく食物のなかの毒素を制するためでもある。
30 中年と食事
食欲は朝夕におこる。貧乏な人でも食欲を自制するのを失敗することがある。まして裕福な人はなおさらである。注意しなければいけない。中年をすぎると、元 気が減ってくる。男女の色欲は次第に弱まるが、食欲はなかなか弱くならない。老人は内臓が弱い。そのために胃腸を痛めることが多い。老人が急死するのは食 中りの場合が多い。(現在でもそうなのだろうか?調べていないので分かりません。)食事には注意が必要である。
31 新鮮な食物
すべての食物は、みな新鮮な生気のあるものを食べるのがよい。古くなって香りがわるく、色つや、味の変わったものは体によくない。食べてはいけない。
32 好物を少量とる
好きな食べ物は、体が欲している。食べると、身体の足りない部分を補ってくれる。でも好きだからと言ってたくさん食べると、害になる。嫌いなものを少し食べることよりも、よくない。好きなものは少しだけ食べることがいいのである。
33 五つの好み
清らかで新しいもの、香りがよいもの、もろくてやわらかいもの、味のかるいもの、もともといいもの、の五つは好んで食べるのがよい。益こそあれ害はない。これに反するものは食べてはいけない。
34 虚弱者と栄養
病弱な人は、魚鳥の肉を味よくして少しずつ食べるのがよい。薬用人参よりもいい。いきのいい、生魚をよく煮て又はあぶって食べるのがいい。
塩につけたものは一両日すぎたものがもっともよい。生魚を味噌でつけたものを煮たりしたものもよい。暑い夏は長くもたないので用心しないといけない。
35 胃腸の弱いひとと生魚
胃腸の弱い人は、生魚をあぶって食べるのがよい。煮たものをより消化がよい。小さなものは煮て食べるのがよい。大きな魚はあぶって食べるか、古くなった酒に鰹節、煎り塩、醤油などをいれて煮つめたものを熱くして、生姜わさびを加えて、汁によくひたして食べると害がない。
36 魚・野菜の調理
大きな魚は脂肪が多くて消化しにくい。脾虚(脾臓の弱い人)の人は多く食べてはいけない。食べるときは、うすく切って食べると消化しやすい。鯛や鮒を大きな切り身、または丸煮で食べるのはよくない。
大根、人参、かぼちゃ、白菜なども大きく厚く切ったものは消化しにくいので、うすく切って煮ないといけない。
37 生魚の味つけ
生魚は味をよくつけて食べると、早く消化して体によい。煮すぎたり干して脂肪の多くなったもの、長時間塩漬けしたものなどは、よくない。
38 脂肪の多い魚はいけない
ひどく生臭くて脂肪の多い魚は食べてはいけない。魚の内臓は脂が多いので食べてはいけない。塩辛はとくに消化がわるく、痰を生じる。
39 さし身となますと
さしみや、まなす(薄く細く切った魚肉を酢に浸した食品)は、人によっては害になることがあるので、ひかえるようにする。冷え症のひとは温めてから食べること。なますは、老人や病人は食べてはいけない。消化しにくいからである。未熟なものや熟しすぎているのもいけない。
海老のなますは毒がある。うなぎに酢は消化が悪い。大きな鳥の皮や魚の皮は堅く脂肪が多い。これらは消化しにくく食べてはいけない。
40 肉類はひかえめに
日本人は胃腸が弱い人が多いので、肉類やゆで卵をまるごと食べたりすると、消化しにくいので多く食べてはいけない。野菜も大きく切ったものや丸煮にしたものはいけない。
41 生魚の塩づけ
生魚の新鮮なものに塩を薄くふり、天日にほして一両日(一日または二日)すぎて少しあぶり、薄く切って酒にひたして食べると、体に害はない。
42 味噌の働き
味噌は胃腸の働きを助ける。たまり(味噌の上に溜まった液、醤油の一種)や醤油は、味噌よりあくが強い。嘔吐や下痢をする人にはよくない。酢は多くとってはいけない。胃腸によくない。ただし胃痙攣をおこす人には少しならいい。濃い酢は多くとるのは禁物である。
43 野菜の調理
胃腸が弱く生野菜を避けている人は、ほした野菜を煮て食べないといけない。冬になって大根を薄く切って生のまま天日にほす。レンコン、ごぼう、山芋、うどの根などは薄く切って煮てからほす。
しいたけ、松露(担子菌類の食用きのこ、トリュフかも?)、いわたけなどもほしたほうがいい。
松茸は塩漬けがいい。ゆうがおは切って塩に一夜つけて、石のおしをかけたらほす。かんぴょうもよい。白芋(はすいも)の茎に熱湯をかけて天日にほす。これらは胃腸の弱い人にはいい。
枸杞(「くこ」、ナス科の落葉小低木)、五加(「うこぎ」、ウコギ科の落葉低木)、ひゆ(ヒユ科の一年草。インド原産で古くから栽培。)、菊、蘿も(「ら も」、ががいも?、ガガイモ科の蔓(ツル)性多年草)(ちぐさ)、鼓子花の葉は、若葉のうちにとって、煮てほし、それを吸物とするか味噌であえものとして 食べるのがよい。菊の花は生で干す。これらはひ弱な人によい。古い葉っぱは堅い。海菜は体が冷えるので老人やひ弱な人にはよくない。昆布を多く食べるのも よくない。
44 調理と栄養
食べ物の味が好みでないときは、自分の体のためにならない。かえって害になる。たとえ自分のために作られたものであっても、食べてはいけない。味が好みの ものでも、お腹がすいていないいないときは食べてはいけない。食べ物をそまつにするのがいやなら、ほかの人に食べてもらえばいい。
宴会の招かれても、気のすすまない食べ物は食べないほうがいい。また味がよくても多く食べてはいけない。
45 節飲節食
食欲を我慢するというのは、それほど大変なことではない。食事をとる短い時間だけ我慢すればいい。そして、ほんの少し食べる量を減らしさえすればいい。酒の場合も同じである。
46 脾胃の好む十一種
内臓に負担のかからないものとは、温かいもの、やわらかいもの、よく熟したもの、ねばらないもの、うす味でかるいもの、煮立てのもの、清潔なもの、新鮮な もの、香りのいいもの、成分のよいもの、味のかたよらないものである。これらは、身体の栄養となる。もちろん、これらのものであっても食べ過ぎはよくな い。
47 脾胃の嫌う十三種
胃腸によくないものは、生もの、つめたいもの、堅いもの、ねばっこいもの、不潔なもの、くさいもの、生煮えのもの、煮すぎて香りをなくしたもの、煮たあと 長く置いたもの、果物の未熟なもの、古くなって味をなくしたもの、味のかたよったもの、脂肪が多くてくどいものなどである。これらは、食べない方がいい。
48 暴飲暴食は胃の気をへらす
暴飲暴食を続けたり、間食ばかりしたり、冷たいものや体にあわない食事をすると、病気になる。嘔吐や下痢を繰り返し起こすようだと、胃の負担が増え、短命になる。用心することが大事である。
49 三味を少なくする
塩と酢と辛いものを多く食べてはいけない。これらを多く食べると喉が渇き湯を多く飲みその結果、湿疹ができ内臓の調子を悪くする。湯、茶、吸物は多く飲んではいけない。
喉が渇くものを食べたときは、葛湯のような粘っこいものを飲むといい。葛湯は粘っこく、本来はあまり薦められないが、やむなく飲むのである。
50 酒食のあとの注意
食べ過ぎたり飲みすぎたりしたときは、上を向いて休むといい。手で顔や腹、腰などをなでて胃腸を助けてやるのもよい。
51 食後の運動
若い人は食後、軽い運動をすればいい。でもきつい運動はよくない。老人も、自分にあった運動をすればいい。食後、同じ場所で座り続けたりすると、消化しにくいのでよくない。
52 脾胃の弱いひとに食物
胃腸の弱い人や老人は、消化のしにくい餅や団子、饅頭、冷えて堅くなったものは食べてはいけない。菓子なども控えめにするのがいい。体の調子によっては、それらのものはひどく害になるからである。夕食後はとくに食べてはいけない。
53 薬酒を飲む
昔の人は、寒い季節には毎朝、まろやかな薬酒を少し飲み、春が来たら止めるのがいいと言っている。そういう人もいるだろうが、焼酎で作った薬酒はよくない。
54 肉類は少なめに
肉や果物の味は、少し食べてもわかる。多く食べる必要はない。多く食べて、体を壊すよりも少なく食べてその味を楽しむ方がいい。
55 水の選択
水は清らかで甘いのを好むべきである。生まれた土地の水によって性質が変わるというくらいだから、水はよく選んで使用しないといけない。悪い水は、飲んではいけないし、茶や薬を煎ずる水はとくに清らからものを選ばないといけない。
56天水と雪どけの水と
雨水は成分がよく毒もない。(現代は、酸性雨などで違うかも)器にとって薬や茶を煎じるといい。雪解けの水はもっとよい。雨だれの水は毒がありよくない。 たまり水も飲んではいけない。地下水でも元の水がたまり水ならよくない。井戸の水もたまり水が混入していてはいけないから、注意しないといけない。
57 熱湯を飲むな
湯は一度沸かしてから、それを冷まして飲む。沸騰していない湯を飲むのはよくない。
58 小食の効用
小食の人は、胃腸にゆとりができ、食べたものを十分に消化し体の栄養となる。そのため病気になることは少ない。
逆に大食な人は、胃腸に負担がかかり、食べたものを十分消化できない。そして病気にかかり、急死するひとがいる。大食は間違いなく短命のものである。やめないといけない。
繰り返して言うが、老人は胃腸が弱いから大食してはいけない。
59 過食と急死
食べ過ぎた人は、生姜に塩を少し加えて煎じそれを多く飲ませ、たくさん吐かせるのがいい。それから胃腸の薬を服用する。
ところが食べ過ぎの人を脳卒中と誤解して、脳卒中の薬を与えると、かえって害になる。
食べ過ぎの人には、少量でも食事をとらしてはいけない。粘っこい重湯(水の量を多くして米を炊いた上澄みの糊状の汁)はとくによくない。一両日は絶食させてもいい。食中りを脳卒中と間違えやすいが、脳卒中の治療をしても食中りは治らないのどうしようもない。
60 飢渇のときの食事
腹がへったり、喉が渇いたときに、たくさん飲食をするのは胃腸によくない。多く食べるのを我慢しないといけない。消化しきれないうちに次の食事をとるのもよくない。食欲がでてきてから次の食事をとれば、食べたものが十分消化され身体の養分になる。
61 温かいものをたべる
老人や子供は四季を問わず、いつでも温かいものを食べるのがよい。夏の時期や、若くて元気な人でも温かいものを食べるのがいい。生ものや冷たいものを食べてはいけない。胃にもたれやすく下痢の原因になる。冷水も多く飲んではいけない。
62 冷たいものをさける
夏期に瓜類や生野菜を多く食べたり、冷たい麺類を頻繁に食べたり、冷水を多く飲むと、秋になってから必ず病気になる。病気には原因がなければ起こらない。予防が大切である。
63 食後の口内を清潔に
食後は湯茶で口を数回すすぐのがよい。口の中を清潔にし、歯にはさまったものを取り除くことができる。爪楊枝を使うのはよくない。夜は暖かい塩茶(番茶に 塩を少し入れたもの。酔いをさます効果があるとされる。)をもって口をすすぐとよい。歯茎が丈夫になる。口をすすぐための茶の温度は中の下くらいのものが よい。
64 他郷での飲食
人がほかの場所に行き水や土が変わり、その水土がなじまずに病になることがある。そうしたときは、豆腐を食べるとよい。
65 山中のひとは長命
山の中に住む人は肉食をすることが少ないので、病気にかかりにくく長命である。海辺の魚肉を多く食べる人は、病気になりやすく短命である。
66 朝粥の効用
朝早く粥を温かにやわらかにして食べると、胃腸によく、身体を温め、唾液ができる。冬期はもっともよいものだ。
67 香辛料
生姜、胡椒、山椒、たで(ヤナギタデおよびその一変種。特有の辛みを有し、幼苗を刺身のつまなどにして食用。)、紫蘇、生大根、生ねぎなどは、食べ物の香 りを引き立て、悪臭を取り去り、魚毒を取り除き、食欲を増やす。それぞれの食品にあった香料をほどよく加え、毒をなくすのが肝心である。多く使用してはい けない。辛いものが多いと、元気がなくなり、喉が渇いてくる。
68 飯の味
朝夕の食事のたびに、最初の一椀のご飯は吸物で食べるのがよい。おかずを食べるのは、その後からでよい。そのほうが、ご飯の持つ本来の味を楽しめるからである。それにおかずの量が少なくてすむ。おかずを最初から食べると、ご飯の味がわからない。
これは養生の観点からいっても、よいことだし、経済的である。ご飯の味のよさを知るばかりでなく、消化もよく害にならない。
69 就寝前の注意
寝るときになって胃もたれになり、痰がでるようであれば、少し痰切りの薬を用いるのがいい。寝てからの痰は危険である。
70 点心は食べないがよい
日が短い時期、昼のあいだに点心(茶うけの菓子)を食べてはいけない。日が長い時期も多く食べないほうがいい。
71 夕食と朝食
夕食は朝食よりも少ないのがよい。副食も同様に少ないのがよい。
72 煮もののよしあし
煮物は、すべて煮えて柔らかいものを食べるのがよい。堅いもの、半煮えのもの、煮すぎて味のなくなったもの、口に合わないものなどは食べてはいけない。
73 宴会での飲食
家にいるときは、食べ過ぎたり飲みすぎたりすることに気をつけることができる。でも、招待された宴会などでは、料理の仕方や味が気に入らないことや、副食が多いためつい食べ過ぎてしまうことがある。客になったとしても、飲食の節度を慎まなければいけない。
74 食後の力仕事
食後すぐに力仕事をしてはいけない。急いで歩いてはいけない。また移動するのもよくない。
巻第三 飲食 上 終わり
1 元気は生命のもと、飲食はその養い
人とは、天と地から生まれてきた。しかし、人が元気に生きていくには飲食により養分を毎日とらなければいけない。たとえ、半日でも飲食をぬかすことはよくない。
でも、飲食とは欲望の一つである。欲望のおもむくままに飲食を続けることは、胃腸によくない。度を過ぎれば、生命にもかかわることである。
胃腸から取り込まれた養分が、身体を養っている。草木が土のなかの栄養を取り込み生きているのと同じ事である。養生の道とは、胃腸を整えることが第一である。
2 病いは口から
人は毎日のように食事をする。食事とは楽しいものであるが、度をすぎるほど取りすぎることはよくない。口から出し入れするものには、注意が必要ある。
3 聖人の飲食
聖人の飲食の法とは養生の要点である。
4 熱飲、冷飲をさける
ご飯はよく火を通し中まで柔らかくなったものがいい。堅いものや粘っこいものはよくない。そして温かいうちに食べるのがいい。吸い物も熱いうちがよい。
酒は夏でも温めて飲むのがいい。冷酒は体によくない。冬は熱燗がよくない。気が上ってよくないからである。
5 飯のたき方
ご飯の炊きかたにも、いろいろある。健康な人には普通に炊く。胃痙攣をおこしている人には、たいたご飯に湯を入れて二度炊きするのがいい。胃腸の弱い人に は、水を多めにして炊くのがいい。粘っこいのは気をふさぐのでよくない。堅いのは消化しにくいのでよくない。新米は米の気が強く、体が弱っている人にはよ くない。早稲(早く成熟する稲)は、病人にはよくない。奥稲(おそく成熟する稲?)は性分が軽いのでよい。
6 淡薄なものを食べる
すべての食事はあっさりしたうす味のものがよい。濃い味や脂っこいものをたくさん食べてはいけない。生もの、冷えたもの、堅いものは禁物である。吸物は一椀、肉料理は一品、副食は一、二品にとどめる。
肉はたくさん食べてはいけない。生肉は続けて食べてはいけない。吸物に肉を入れたときは、副食に肉類をいれないほうがいい。
7 飲食はひかえめに
飲食は人が生きていくために必要なものである。でも必要以上にむさぼってはいけない。食欲を抑えることも必要である。
食べ過ぎてしまい、そのために胃腸薬を服用すると、胃の本来の働きが弱くなってしまう。
食欲を抑えるには、精神力が必要だ。病気になることを怖れることを忘れないようにしなければいけない。
8 満腹をさける
おいしいものであっても、たくさん食べてはいけない。少しだけ食べても、たくさん食べても、そのおいしさを堪能するという点ではあまり変わらないからである。
おいしいと言ってたくさん食べると、健康を損ない後で苦しむことになる。それゆえに、はじめから節度をもって食事を取ることを心がけなければいけない。腹八分目がいいのである。
9 五味偏勝をさける
五味偏勝というのは、同じ味のものを食べ過ぎることをいう。
甘いものを続けて食べると、腹が張ってしまい痛む。
辛いものを食べ過ぎると、血が上り、湿疹ができ、眼も悪くする。
塩辛いものを多く取ると、血がかわき、喉か渇き、湯水を多く飲むようになり、湿疹ができ、胃腸を弱めてしまう。
苦いものを多く取ると、胃腸の調子を狂わす。
それゆえに、いろんな味をまんべんなく食べることが病気にかからないこつである。
10 食物の選択
食物とは、身体を養うものである。それゆえに、たとえおいしいものでも、体に害があるものは食べてはいけない。体を温めるものは良く、体を冷やすものは良くない。生ものや辛いもの、ひどく熱いものも良くない。
11 飯の多食は不可
ご飯は人に力を、よく与えてくれる。と、同時に害もある。ご飯は消化しにくいので、たくさん食べると胃腸に負担がかかる。ほかのものを多く食べ過ぎるよりも、よくない。
よその家に行き、ご飯を食べさせてもらうときでも、言われるままにたくさん食べることをさけ、少しずつ食べるようにすると、相手方にも悪い印象を与えなくてすむ。
ご飯をいつもと同じくらいにしても、ほかのものをたくさん食べると健康には悪い。ご飯を食べた後、茶菓子やもち、麺類を食べると胃腸に負担がかかる。
もし、食後のあとになにか食べることがあるときは、最初のご飯を少量にすべきである。
12 口腹の欲をおさえる
食事のことばかり気にかけている人は卑しい人である。小さなことを大事にして大きなことを大事にしないことと同じであろうから。
食い意地ばかりはっていると、病気にもなるし、酒乱ともなると卑しさ大爆発といったところです。
13 夜食の法
夜に食事をとる人は、なるべく夜の早い時間にとるのがいい。そうしないと、寝るまでに消化しきれない。
夜に食事をしない人も、食事のあとすぐに寝るのはよくない。腹が減っても、夜は仕事をするときではないから、害はないであろう。
酒も同じで、夜は飲まないのがいい。飲むとしても早い時間に少しだけ飲むのがいいだろう。
と、いっても現代は夜の生活も重要であるから、重々気をつける方がいいだろう。
14 食と栄養と
食事を制限しすぎると、栄養不足になると言う人がいる。しかし食事は人の欲望であるから少しくらい制限しすぎるほうが、いいのである。
15 適量を守る
好きな食事が出てきたとき、または空腹時においしく珍しい食事が出てきたとき、または種類多くの品数の料理が出てきても、食欲に負け度を越すほど食べないよう、心がけなければいけない。
16 腹七、八分の飲食
食べ物を見ると人は食欲がわく。それで、つい食べ過ぎてしまうものだ。腹七、八分くらいで食事を抑えておいても、しばらくすれば腹は十分になる。腹いっぱい食べると、あとで腹が張り病気になる。
17 過酒食
食べ過ぎたり酒を飲む過ぎてしまったときに、薬を用いて消化を助けるという行為は、味方の犠牲をいとわない戦いをしないと勝利できない戦争の状況であると いえる。胃腸がその戦場であるということは、胃腸にとってつらいものである。それゆえに胃腸の戦場を持ち込まないためにも、薬を飲まなければいけない状況 をつくらないように心がけなければいけない。
18 五思
食事をするときに考えなければいけないことが5つある。
一つは、誰から食事を与えられているかである。父や上司、兄弟や親類、あるいは他人から与えられているかもしれない。それらの人には感謝の気持ちを忘れてはいけない。自力で食物を得ているものも、自分のすんでいる国にたいして恩を忘れてはいけない。
二つは、食物は農民が作り出してくれたことを感謝しないといけない。自分で食物を作り出していないものは、特にそうである。
三つは、自分がなにも貢献をしていないときに食事を取ることがあるときは、とても幸福であることを忘れてはいけない。
四つは、自分の食事よりも貧しい食事をしている人がいることを忘れてはいけない。自分が餓死しないで生きていることを感謝しないといけない。
五つは、昔の人は米、麦、粟、豆、黍を食べることができないために草木の実や根や葉を食べていたのに、今ではそれらを食べることができることを感謝しない といけない。また、火を使い温かい食事をとれることも感謝しないといけない。味もよく、胃腸にもやさしい食事がとれることも感謝しないといけない。(なん か、すごく古い時代の話です。)
今の時代はとてもいいものである。これらの五つのうち、二つくらいでいいから、食事をするときは思い出してほしいものである。
19 夕食は軽く
夕食は朝食より消化しにくいものである。だから夕食は少なめにするほうがいい。味もあっさりしたもので、副食品も多いのはいけない。
魚や鳥など味がこく、脂肪が多いものは夕食に悪い。菜類、山芋、人参、白菜、芋、くわい(オモダカ科の水生多年草、水田で栽培をし地下の球根を食べる。冬から春にかけて収穫できる。)などは、胃腸によくないから夕食に多く食べてはいけない。食べなければ、そのほうがいい。
20 食べてはいけない食物
すえた臭いのするご飯、古い魚、ふやけた肉、色香のよくないもの、よくない臭いのするもの、煮てから長い時間がたったものは食べてはいけない。また間食はよくない。
早すぎて熟していないもの、成熟していないものの根を掘り出して食べることや、時期がすぎて盛りを失ったものは、いわゆる時ならぬものであるから食べてはいけない。
聖人といわれる人は、このようなものを決して食べなかった。
食事はご飯を中心にして、ご飯以外のものをご飯以上に食べることは体によくない。
21 副食は少なめに
飲食のうちで、ご飯を十分に食べないと飢えはいやせない。吸物はご飯を食べやすくするだけである。肉は少しだけで十分である。少しの量で食欲を刺激するく らいでいい。野菜は穀物や肉類ではとれない栄養分を補い消化を助ける。すべての食品にはすべて意味があるものだ。しかし、食べ過ぎはよくない。
22 穀物と肉類
人というのは、元気というものをもって成り立っている。元気は、穀物の栄養分によって生まれる。穀物や肉類によって元気をつくりだしているのである。でも多食して元気をなくしてはいけない。元気が穀物に勝てば長生きできる。
23 飲食の量
胃腸の弱い人、特に老人は食事により病気になりやすい。おいしい料理が出てきても、我慢することが大事である。度をすぎた食事をしてはいけない。食欲に勝てないのなら、勝てるように精神力を鍛えなければいけない。
24 宴の飲食もひかえめに
友人たちと会食すると、ついおいしいものを食べ過ぎることがある。食べ過ぎてしまうことは、健康のうえではよくないことである。
「花は半開に見、酒は微酔にのむ」といわれる言葉があるがこれを実行するのがよい。欲望のまま過ごすことは不幸のもとになる。楽しみの絶頂は悲劇のもとになることが多い。
25 持病と食べもの
食品により体に害があるものはすべてメモを取っておき、その食品は二度と食べないようにする。時間がたってから害を及ぼすものもあるが、これも食べてはいけない。
26 食当たりと絶食
食中りをおこしたときは、絶食をするのがよい。あるいは、食べる量を半分または3分の2に減らすとよい。
食べ過ぎた場合は、すぐに入浴するとよい。
魚や鳥の肉、魚や鳥の干物、生野菜、油っこいもの、ねばっこいもの、堅いもの、もちやだんご、そして菓子類などを食べてはいけない。
27 消化不良と朝食ぬき
朝食が十分に消化しないうちに昼食をとってはいけない。茶菓子なども食べてはいけない。昼食が消化しないうちに夜食をとってはいけない。昨夜食べたものが消化しきらないときは、朝食は抜かせばよい。もしくは半分にするか、酒や肉類をとらなければいい。
食中りをおこしたときは、まず絶食がいい。軽い食中りなら、薬を飲まなくても治るであろう。
養生の術を知らない人は食中りになっても粘っこい米湯などを摂取することがあるが、体に害になるからとってはいけない。食中りの人は、二三日絶食しても、 それほど害にはなることはない。(ただし水気を完全に断つのはよくない。)顔が食中りで膨れているからである。(あまり関係ないかもしれない。)
28 煮ものの味
煮すぎたものや、煮きらないものは食べてはいけない。魚を煮るときは十分に煮なければいけない。煮すぎて味を失ったものは、胸にのこりやすい。程よく煮るのがこつである。
蒸した魚は時間が長くなっても味を失わない。魚を多くの水で煮ると味をなくしてしまう。
29 調味料のこと
聖人は食にあった醤(もろみのことではない。塩辛・佃煮のことかも?)がないと召し上がらなかったという。醤とは調味料のことである。
具体的に例をあげると塩、酒、醤油、酢、蓼(「だて」、イヌタデ・ハナタデ・ヤナギタデなどの植物の総称、辛みのある食用の植物のこと)、生姜、わさび、 胡椒、芥子、山椒などそれぞれの食物にあう調味料がある。これを食物の中にいれるのは、味を調えるばかりでなく食物のなかの毒素を制するためでもある。
30 中年と食事
食欲は朝夕におこる。貧乏な人でも食欲を自制するのを失敗することがある。まして裕福な人はなおさらである。注意しなければいけない。中年をすぎると、元 気が減ってくる。男女の色欲は次第に弱まるが、食欲はなかなか弱くならない。老人は内臓が弱い。そのために胃腸を痛めることが多い。老人が急死するのは食 中りの場合が多い。(現在でもそうなのだろうか?調べていないので分かりません。)食事には注意が必要である。
31 新鮮な食物
すべての食物は、みな新鮮な生気のあるものを食べるのがよい。古くなって香りがわるく、色つや、味の変わったものは体によくない。食べてはいけない。
32 好物を少量とる
好きな食べ物は、体が欲している。食べると、身体の足りない部分を補ってくれる。でも好きだからと言ってたくさん食べると、害になる。嫌いなものを少し食べることよりも、よくない。好きなものは少しだけ食べることがいいのである。
33 五つの好み
清らかで新しいもの、香りがよいもの、もろくてやわらかいもの、味のかるいもの、もともといいもの、の五つは好んで食べるのがよい。益こそあれ害はない。これに反するものは食べてはいけない。
34 虚弱者と栄養
病弱な人は、魚鳥の肉を味よくして少しずつ食べるのがよい。薬用人参よりもいい。いきのいい、生魚をよく煮て又はあぶって食べるのがいい。
塩につけたものは一両日すぎたものがもっともよい。生魚を味噌でつけたものを煮たりしたものもよい。暑い夏は長くもたないので用心しないといけない。
35 胃腸の弱いひとと生魚
胃腸の弱い人は、生魚をあぶって食べるのがよい。煮たものをより消化がよい。小さなものは煮て食べるのがよい。大きな魚はあぶって食べるか、古くなった酒に鰹節、煎り塩、醤油などをいれて煮つめたものを熱くして、生姜わさびを加えて、汁によくひたして食べると害がない。
36 魚・野菜の調理
大きな魚は脂肪が多くて消化しにくい。脾虚(脾臓の弱い人)の人は多く食べてはいけない。食べるときは、うすく切って食べると消化しやすい。鯛や鮒を大きな切り身、または丸煮で食べるのはよくない。
大根、人参、かぼちゃ、白菜なども大きく厚く切ったものは消化しにくいので、うすく切って煮ないといけない。
37 生魚の味つけ
生魚は味をよくつけて食べると、早く消化して体によい。煮すぎたり干して脂肪の多くなったもの、長時間塩漬けしたものなどは、よくない。
38 脂肪の多い魚はいけない
ひどく生臭くて脂肪の多い魚は食べてはいけない。魚の内臓は脂が多いので食べてはいけない。塩辛はとくに消化がわるく、痰を生じる。
39 さし身となますと
さしみや、まなす(薄く細く切った魚肉を酢に浸した食品)は、人によっては害になることがあるので、ひかえるようにする。冷え症のひとは温めてから食べること。なますは、老人や病人は食べてはいけない。消化しにくいからである。未熟なものや熟しすぎているのもいけない。
海老のなますは毒がある。うなぎに酢は消化が悪い。大きな鳥の皮や魚の皮は堅く脂肪が多い。これらは消化しにくく食べてはいけない。
40 肉類はひかえめに
日本人は胃腸が弱い人が多いので、肉類やゆで卵をまるごと食べたりすると、消化しにくいので多く食べてはいけない。野菜も大きく切ったものや丸煮にしたものはいけない。
41 生魚の塩づけ
生魚の新鮮なものに塩を薄くふり、天日にほして一両日(一日または二日)すぎて少しあぶり、薄く切って酒にひたして食べると、体に害はない。
42 味噌の働き
味噌は胃腸の働きを助ける。たまり(味噌の上に溜まった液、醤油の一種)や醤油は、味噌よりあくが強い。嘔吐や下痢をする人にはよくない。酢は多くとってはいけない。胃腸によくない。ただし胃痙攣をおこす人には少しならいい。濃い酢は多くとるのは禁物である。
43 野菜の調理
胃腸が弱く生野菜を避けている人は、ほした野菜を煮て食べないといけない。冬になって大根を薄く切って生のまま天日にほす。レンコン、ごぼう、山芋、うどの根などは薄く切って煮てからほす。
しいたけ、松露(担子菌類の食用きのこ、トリュフかも?)、いわたけなどもほしたほうがいい。
松茸は塩漬けがいい。ゆうがおは切って塩に一夜つけて、石のおしをかけたらほす。かんぴょうもよい。白芋(はすいも)の茎に熱湯をかけて天日にほす。これらは胃腸の弱い人にはいい。
枸杞(「くこ」、ナス科の落葉小低木)、五加(「うこぎ」、ウコギ科の落葉低木)、ひゆ(ヒユ科の一年草。インド原産で古くから栽培。)、菊、蘿も(「ら も」、ががいも?、ガガイモ科の蔓(ツル)性多年草)(ちぐさ)、鼓子花の葉は、若葉のうちにとって、煮てほし、それを吸物とするか味噌であえものとして 食べるのがよい。菊の花は生で干す。これらはひ弱な人によい。古い葉っぱは堅い。海菜は体が冷えるので老人やひ弱な人にはよくない。昆布を多く食べるのも よくない。
44 調理と栄養
食べ物の味が好みでないときは、自分の体のためにならない。かえって害になる。たとえ自分のために作られたものであっても、食べてはいけない。味が好みの ものでも、お腹がすいていないいないときは食べてはいけない。食べ物をそまつにするのがいやなら、ほかの人に食べてもらえばいい。
宴会の招かれても、気のすすまない食べ物は食べないほうがいい。また味がよくても多く食べてはいけない。
45 節飲節食
食欲を我慢するというのは、それほど大変なことではない。食事をとる短い時間だけ我慢すればいい。そして、ほんの少し食べる量を減らしさえすればいい。酒の場合も同じである。
46 脾胃の好む十一種
内臓に負担のかからないものとは、温かいもの、やわらかいもの、よく熟したもの、ねばらないもの、うす味でかるいもの、煮立てのもの、清潔なもの、新鮮な もの、香りのいいもの、成分のよいもの、味のかたよらないものである。これらは、身体の栄養となる。もちろん、これらのものであっても食べ過ぎはよくな い。
47 脾胃の嫌う十三種
胃腸によくないものは、生もの、つめたいもの、堅いもの、ねばっこいもの、不潔なもの、くさいもの、生煮えのもの、煮すぎて香りをなくしたもの、煮たあと 長く置いたもの、果物の未熟なもの、古くなって味をなくしたもの、味のかたよったもの、脂肪が多くてくどいものなどである。これらは、食べない方がいい。
48 暴飲暴食は胃の気をへらす
暴飲暴食を続けたり、間食ばかりしたり、冷たいものや体にあわない食事をすると、病気になる。嘔吐や下痢を繰り返し起こすようだと、胃の負担が増え、短命になる。用心することが大事である。
49 三味を少なくする
塩と酢と辛いものを多く食べてはいけない。これらを多く食べると喉が渇き湯を多く飲みその結果、湿疹ができ内臓の調子を悪くする。湯、茶、吸物は多く飲んではいけない。
喉が渇くものを食べたときは、葛湯のような粘っこいものを飲むといい。葛湯は粘っこく、本来はあまり薦められないが、やむなく飲むのである。
50 酒食のあとの注意
食べ過ぎたり飲みすぎたりしたときは、上を向いて休むといい。手で顔や腹、腰などをなでて胃腸を助けてやるのもよい。
51 食後の運動
若い人は食後、軽い運動をすればいい。でもきつい運動はよくない。老人も、自分にあった運動をすればいい。食後、同じ場所で座り続けたりすると、消化しにくいのでよくない。
52 脾胃の弱いひとに食物
胃腸の弱い人や老人は、消化のしにくい餅や団子、饅頭、冷えて堅くなったものは食べてはいけない。菓子なども控えめにするのがいい。体の調子によっては、それらのものはひどく害になるからである。夕食後はとくに食べてはいけない。
53 薬酒を飲む
昔の人は、寒い季節には毎朝、まろやかな薬酒を少し飲み、春が来たら止めるのがいいと言っている。そういう人もいるだろうが、焼酎で作った薬酒はよくない。
54 肉類は少なめに
肉や果物の味は、少し食べてもわかる。多く食べる必要はない。多く食べて、体を壊すよりも少なく食べてその味を楽しむ方がいい。
55 水の選択
水は清らかで甘いのを好むべきである。生まれた土地の水によって性質が変わるというくらいだから、水はよく選んで使用しないといけない。悪い水は、飲んではいけないし、茶や薬を煎ずる水はとくに清らからものを選ばないといけない。
56天水と雪どけの水と
雨水は成分がよく毒もない。(現代は、酸性雨などで違うかも)器にとって薬や茶を煎じるといい。雪解けの水はもっとよい。雨だれの水は毒がありよくない。 たまり水も飲んではいけない。地下水でも元の水がたまり水ならよくない。井戸の水もたまり水が混入していてはいけないから、注意しないといけない。
57 熱湯を飲むな
湯は一度沸かしてから、それを冷まして飲む。沸騰していない湯を飲むのはよくない。
58 小食の効用
小食の人は、胃腸にゆとりができ、食べたものを十分に消化し体の栄養となる。そのため病気になることは少ない。
逆に大食な人は、胃腸に負担がかかり、食べたものを十分消化できない。そして病気にかかり、急死するひとがいる。大食は間違いなく短命のものである。やめないといけない。
繰り返して言うが、老人は胃腸が弱いから大食してはいけない。
59 過食と急死
食べ過ぎた人は、生姜に塩を少し加えて煎じそれを多く飲ませ、たくさん吐かせるのがいい。それから胃腸の薬を服用する。
ところが食べ過ぎの人を脳卒中と誤解して、脳卒中の薬を与えると、かえって害になる。
食べ過ぎの人には、少量でも食事をとらしてはいけない。粘っこい重湯(水の量を多くして米を炊いた上澄みの糊状の汁)はとくによくない。一両日は絶食させてもいい。食中りを脳卒中と間違えやすいが、脳卒中の治療をしても食中りは治らないのどうしようもない。
60 飢渇のときの食事
腹がへったり、喉が渇いたときに、たくさん飲食をするのは胃腸によくない。多く食べるのを我慢しないといけない。消化しきれないうちに次の食事をとるのもよくない。食欲がでてきてから次の食事をとれば、食べたものが十分消化され身体の養分になる。
61 温かいものをたべる
老人や子供は四季を問わず、いつでも温かいものを食べるのがよい。夏の時期や、若くて元気な人でも温かいものを食べるのがいい。生ものや冷たいものを食べてはいけない。胃にもたれやすく下痢の原因になる。冷水も多く飲んではいけない。
62 冷たいものをさける
夏期に瓜類や生野菜を多く食べたり、冷たい麺類を頻繁に食べたり、冷水を多く飲むと、秋になってから必ず病気になる。病気には原因がなければ起こらない。予防が大切である。
63 食後の口内を清潔に
食後は湯茶で口を数回すすぐのがよい。口の中を清潔にし、歯にはさまったものを取り除くことができる。爪楊枝を使うのはよくない。夜は暖かい塩茶(番茶に 塩を少し入れたもの。酔いをさます効果があるとされる。)をもって口をすすぐとよい。歯茎が丈夫になる。口をすすぐための茶の温度は中の下くらいのものが よい。
64 他郷での飲食
人がほかの場所に行き水や土が変わり、その水土がなじまずに病になることがある。そうしたときは、豆腐を食べるとよい。
65 山中のひとは長命
山の中に住む人は肉食をすることが少ないので、病気にかかりにくく長命である。海辺の魚肉を多く食べる人は、病気になりやすく短命である。
66 朝粥の効用
朝早く粥を温かにやわらかにして食べると、胃腸によく、身体を温め、唾液ができる。冬期はもっともよいものだ。
67 香辛料
生姜、胡椒、山椒、たで(ヤナギタデおよびその一変種。特有の辛みを有し、幼苗を刺身のつまなどにして食用。)、紫蘇、生大根、生ねぎなどは、食べ物の香 りを引き立て、悪臭を取り去り、魚毒を取り除き、食欲を増やす。それぞれの食品にあった香料をほどよく加え、毒をなくすのが肝心である。多く使用してはい けない。辛いものが多いと、元気がなくなり、喉が渇いてくる。
68 飯の味
朝夕の食事のたびに、最初の一椀のご飯は吸物で食べるのがよい。おかずを食べるのは、その後からでよい。そのほうが、ご飯の持つ本来の味を楽しめるからである。それにおかずの量が少なくてすむ。おかずを最初から食べると、ご飯の味がわからない。
これは養生の観点からいっても、よいことだし、経済的である。ご飯の味のよさを知るばかりでなく、消化もよく害にならない。
69 就寝前の注意
寝るときになって胃もたれになり、痰がでるようであれば、少し痰切りの薬を用いるのがいい。寝てからの痰は危険である。
70 点心は食べないがよい
日が短い時期、昼のあいだに点心(茶うけの菓子)を食べてはいけない。日が長い時期も多く食べないほうがいい。
71 夕食と朝食
夕食は朝食よりも少ないのがよい。副食も同様に少ないのがよい。
72 煮もののよしあし
煮物は、すべて煮えて柔らかいものを食べるのがよい。堅いもの、半煮えのもの、煮すぎて味のなくなったもの、口に合わないものなどは食べてはいけない。
73 宴会での飲食
家にいるときは、食べ過ぎたり飲みすぎたりすることに気をつけることができる。でも、招待された宴会などでは、料理の仕方や味が気に入らないことや、副食が多いためつい食べ過ぎてしまうことがある。客になったとしても、飲食の節度を慎まなければいけない。
74 食後の力仕事
食後すぐに力仕事をしてはいけない。急いで歩いてはいけない。また移動するのもよくない。

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