「歯は芸術なり」の信条で、歯科医院を長年営んでいるのがN氏です。
N氏はたくさんの患者の治療にあたりましたが、ある一人の患者との出会いに鮮烈【せんれつ】な印象を受けたと言います。
通常の治療では手の施【ほどこ】しようがなく、抜歯をした時のことです。それまでも抜歯の治療は何度も経験してきましたが、この患者が治療後にとった行動は、氏の歯科医としての使命感を奮い立たせました。
抜いた歯を前に、両手を軽く合わせ「一生使える丈夫な歯をいただきながら、自分のわがままでこのようにしてしまい、申し訳ありませんでした」と詫びたと言うのです。
N氏は、この患者の歯に対する感謝の念に深く感動し、<歯は親から与えられた天然の芸術作品だ>と治療への使命感が固まったそうです。
当たり前な部分に感謝の心を向けられた時、人は大きく変わります。まず足元の小さなことを大切にして、今日一日過ごしたいものです。
今日の心がけ◆生かされていることに感謝します。
旅館に一泊したA氏一家は、バイキング形式の会場で朝食を摂りました。会場は、かなりの混みようでした。
食事をしていると、隣の家族連れのテーブルに係りの女性が来て、「お下げします」と食事の済んだ食器類を、お盆ごとサッと下げていきました。
その光景を見たA氏は、「後から来る宿泊客のために、早めに食事を切り上げよう」と家族に伝え、急いで一通りの食事を終わらせました。
そこへ、責任者らしい男性がやって来ました。男性は「お味はいかがでしたでしょうか。お済みでしたらお下げいたします」と丁寧に頭を下げました。
そして、「デザートもございますので、どうぞごゆっくりお召し上がりください」との言葉を添えてくれたのです。
<事務的な接客をする従業員が多くなってきた>と感じていたA氏ですが、男性の真心のこもった言葉に、近年にない感動を覚えました。
対応に追われる従業員のフォローをした、責任者の妙手といえるでしょう。
今日の心がけ◆真心の一言を添えます。
東洋大学陸上部が、今年1月の箱根駅伝で初優勝を飾りました。箱根路を走った10人の大半が、高校時代は無名の選手でした。
優勝の要因の一つに、監督代行・佐藤尚【さとうたかし】氏のスカウト力があげられています。氏は各地の高校を回り、独自の視点から選手を見極めました。それは、記録にこだわらず、フォームも気にせず、「面白い」と感じるかどうかです。
佐藤氏は、合宿や練習やレースをじっくり見て、<速いというより、将来強くなりそうな選手、伸びしろの大きな選手>を発掘【はっくつ】してきました。ちょっと違う見方が、成功の鍵であったと言えます。
選手が心身と技を鍛えられるよう、指導者として頭と心を使うことが、選手育成の大原則です。これは、仕事にも共通することでしょう。
時には、先入観を捨て去り、常識を超えるような発想転換を図ってみることも必要です。「なぜできないか」「どうしたらできるか」を真剣に考えて、仕事に精励【せいれい】していきたいものです。
今日の心がけ◆発想の転換を図ります。
日本人は「和」を大切にします。上司が「私は相撲が好きだ」と言えば、「私も大好きです」と答え、「あの歌が好きだ」と言った歌を、それほどではなくても「自分も好き」と同調することはないでしょうか。
違った意見を言うと「変わっている」と思われるのではないか、職場では自己表現をしないほうがよいのではないか、と思っている人も多いでしょう。
相手に合わせ、話をよく聞くことは、人間関係を円滑にする基本です。阿吽【あうん】の呼吸で通じ合う関係をつくるには、相手を理解することが大事です。
ところが、現代の職場環境は昔と違って、合理化・効率化が求められ、互いの性格を時間をかけて熟知するほどの余裕がなくなっています。
相手の言う意味がわからないまま、同調しているだけでは、よりよい関係にはならないでしょう。相手に合わせることも大切ですが、自分の考えを上手に伝えるには、自己表現力を身につける必要があります。
コミュニケーション力を高め、尊重し合える関係をつくりたいものです。
今日の心がけ◆コミュニケーション力を高めます。
歯科助手のA子さんは、なるべく多く、患者に声をかけるようにしています。治療に来る人たちの表情に、不安な様子がうかがえるからです。
ある日、初診の患者が来院しました。A子さんは、緊張している患者に対して、ゆっくりとした口調で、症状を訊ねました。「いつからですか?」「それは大変でしたね」と応対しているうちに、患者のこわばった顔が緩【ゆる】んでいきました。
しかし、診察に入ると、また表情が硬くなります。そこでA子さんは、顔を見るたびに名前を呼び、「〇〇さん、だいじょうぶですよ」「〇〇さん、もう少しですからね」と笑顔で話しかけました。
すると、少しずつですが、患者の表情が柔らかくなっていきました。A子さんは、治療を終えた患者に「名前を呼んでくれたから、落ち着きました。ありがとう」とお礼を言われました。
人は名前を呼ばれた時に、個人として認識されていると感じます。状況を見極めて、うまく声をかけていきたいものです。
今日の心がけ◆名前を呼びます
第87回全国高校サッカー選手権大会で8年ぶり2度目の出場を果たした鹿児島城西【かごしまじょうさい】高校イレブンは、爆発的な攻撃力を遺憾なく発揮し、準優勝しました。
伸び伸びとしたプレーから量産されたゴールシーンは、改めてサッカーの楽しさや魅力を伝えてくれたことでしょう。そこには当然、選手たちの日々の弛【たゆ】まぬ練習の積み重ねがありました。
さらに、ボールを扱う技術や体の鍛錬【たんれん】同様、心も合わせて磨いてきたのです。毎試合、応援スタンドには、部員全員で考えた「感謝の心」というチームテーマの横断幕が掲げられていました。
選手たちには<サッカーが出来るのは、支えてくれる家族や指導者また地域の人たちのお陰>という自覚があります。その思いが、通学路や普段利用する駅構内を継続的に清掃しながら「感謝の心」を磨くことにつながったと言います。
能力や技術力アップに目が向きがちですが、確かな成果を上げるには、心を磨き人間性を高めることも大切であると心得たいものです。
今日の心がけ◆心を鍛えます。
東京都千代田区は、日本の首都の中心に位置します。夜間人口は4万人程度ですが、昼間人口は80万人以上にも膨j【ふく】れ上がります。
区では平成11年4月に「ポイ捨て禁止条例」をスタートさせ、きれいな街づくりを目指しました。街角に多くの灰皿を設置したり、駅前などで携帯灰皿を配ったり、清掃活動、PR活動にも区と住民が一体となって懸命に取り組みました。
当初は罰則を伴わない条例で、人々のモラルに訴えてのマナー向上を願ったのですが、その効果はありませんでした。やむを得ず平成14年10月より、日本
で初めてのルール(罰則付の条例)を設けて、ゴミのポイ捨て、歩きタバコ、置き看板などを取り締まることにしたのです。監視員に見つかると2千円の罰金で
す。
路上喫煙者が減り、ポイ捨ての吸殻も減りつつありましたが、その後、再び路上喫煙者は増えはじめました。ルールで罰金を科しても、一人ひとりのマナーが向上しなければ真の解決にはならないようです。
環境美化のために、一人ひとりのマナーを向上させたいものです。
今日の心がけ◆マナーを向上させます。
1月に実施される箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)と同時期に、「もう一つの箱根駅伝」が実施されています。
関東の大学を中心に、ゴミを拾いながら襷【たすき】をつなぐというもので、今年で4回目を迎え、12大学17チームが参加しました。
箱根駅伝と同コース、同中継所での襷の受け渡しで、着順とゴミの量により総合順位を決めます。トップのチームには50ポイント、45リットルのゴミ袋一つにつき10ポイントなどが得られ、スピードと清掃を両立させなければなりません。
今年回収したゴミの量は約200袋にも上りました。この大会は、社会貢献に寄与することを基本理念としています。ゴミ拾いを通して環境問題を考える行動自体に重点を置くため、競技性を第一に置くことを避けるように求められています。
今日、環境保全に関する様々な試みが、企業で行なわれるようになりました。また個々人の意識向上も求められています。他人任せの意識を捨て、地球人としての自覚を深めて、環境保全に取り組んでいきたいものです。
今日の心がけ◆自ら行動に移します。
相撲界には「三年先の稽古」という言葉があります。三年先の自己の向上を目指し、今の稽古に励むという意味です。
テレビ等で新弟子検査の様子を放映することがあります。その時は相撲取りの体には見えなくとも、三年後には一目でそれと思える逞【たくま】しい体つきになっているのを、目にすることがあるでしょう。
「三年先の稽古」は、すべての世界に通じる言葉です。確かな目標を決めず、ただ何となく毎日を過ごしているのと、<数年先には〇〇ができる自分になりたい>と将来に向けて努力を重ねるのでは、年を経るごとに差が広がってきます。
たとえば勉強をする必要があるのであれば、それは通勤電車内でも可能です。制約のある時間や空間も、自分を活かすための好条件と考えれば腹も立ちません。
昔から「努力は嘘をつかない」と言われます。未来の自分の成長を頭に描くことができれば、努力という労も苦にならないでしょう。
いざ、三年先の自分はどうなっているか。楽しみにしたいものです。
今日の心がけ◆未来を見据えて働きます。
結婚式場を経営するM氏は「食べ残しはお客様の声無きクレーム」として、結婚披露宴が終了したら、必ず食べ残しをチェックするようにしています。
ある日、エビの食べ残しが多いことがありました。エビは縁起物として、皮を剥かずに出していました。<もしかすると晴れ着が汚れるので、お客様はエビに手をつけないのでは>とM氏はハッと気がついたと言います。
そこで縁起物としてのエビの見た目は維持しつつ、皮を剥き食べやすく工夫したところ、お客様はエビを残さず食べてくれるようになったそうです。
お客様が不満に感じられること、職場に不足しているものなど、不満や不足など「不」のつく事柄には、解決すべき問題が隠されています。
職場で日ごろ感じている、こうした「不」をそのままにしておかないで、「不」を宝としてとらえることのできる感性や視点が大切なのです。
私たちも仕事上での不足、不要、不満だけでなく、自己の「不」も含めて、「不」を改善の宝として解決に取り組む姿勢を持ちたいものです。
今日の心がけ◆「不」の解決に取り組みます。
かつてヨーロッパの養蜂【ようほう】業者は、寒暖の差が少なく、一年中花が咲き乱れるオーストラリアの気候に目を着【つ】け、蜂と共に海を渡りました。
しかし、常に花が身の回りにあるという「安心」がかえって災いしたのか、当初は順調に蜂蜜を採取したセイヨウミツバチたちは、そのうちあまり働かなくなり、事業は失敗に終わったのです。
逆に、ミツバチの天敵である大スズメバチが生息するという「不安」が存在するのが日本です。そのような状況下で、ミツバチたちは天敵から身を守るため、集団で大スズメバチを囲み、体温によって殺してしまう術を身につけています。
何のストレスもない状況に長く身を置いていると、私たち人間でさえも気を緩【ゆる】めたり、退化してしまうことがあります。「適度なプレッシャーは人を成長させる糧となる」と言われる所以です。
日本を覆う経済環境は、非常に厳しいものがあります。逆境にある今だからこそ、社内の皆が一致団結し、連帯の力を養いたいものです。
南北に長く広がる日本列島を、桜前線
が北上しています。沖縄では先月中旬に
はその時期が過ぎ、いよいよこれからと
心待ちにしている東北や北海道まで、大
自然の生命がいっせいに萌える季節です。
街では新入社員たちの初々しい姿を目に
します。誰しも「自分にも、あのような
頃があったな」と懐かしみつつ、気分を
一新したい季節でもあるでしょう。
穏やかな季節の一方で、中小企業は厳
しい淘汰の嵐に晒されています。昨年来
の世界的な経済の大変動の中で、生き残
りを賭けた戦いを強いられているところ
も少なくありません。また逆に、このよ
うな時期だからこそ、社員と危機感を共
有できる絶好のチャンスと捉え、組織の
精鋭化に取り組む企業もあるようです。
企業は、同じ時間、同じ空間を共有す
るだけの「集団」ではありません。組織
として成立していなければ、いずれは淘
汰の波に呑み込まれてしまいます。
組織として成立するためには、まず共
通の目的を持つことが求められます。社
会情勢が激変を続ける中で適応し続けて
いくには、組織の普遍の縦軸とも言える
共通目的、すなわち「理念」を欠くこと
は出来ません。組織を構成する一人ひと
りが理念を共有することで、変化に対し
て柔軟かつ俊敏に対応しうる組織のバッ
クボーンを作るのです。
次に、仕事に対する個々人の貢献意欲
を高めることです。言われたことだけを
やればいい、周囲の人間におんぶに抱っ
こ、指示待ち等々は、貢献意欲に欠けた
人間の典型でしょう。組織の力を高めて
いくには、各人が自身の持てる力を発揮
したいという意欲を持つことが大切です。
さらに、これら共通目的と貢献意欲を
個々人の意識の中で統合していくのが、
組織内のコミュニケーションです。いく
ら貢献意欲があっても、方向がずれてい
れば、それは徒労になってしまいます。
また、チームワークが発揮できなければ、
結果として大きな無駄が生じます。組織
内での縦横のコミュニケーションが円滑
で密度の濃いものになれば、各々が組織
の中での立場を認識し、意識を統一して
目的に向かうことができ、組織力は何倍
にも高まるでしょう。
以上の事柄は、実は毎日の「活力朝礼」
の中で実現できることです。社是・社訓
の唱和やワンポイント的な学習の時間を
とれば、掲げた理念を社員一人ひとりの
中に熟成させるきっかけとなります。前
日の業務における誰かの小さな貢献を取
り上げれば、周囲に認められることにな
り、意欲を高めます。また、姿勢や返事、
挨拶などの基本動作は、働く意欲の土台
となるものです。そして何より、朝礼の
中での報告・連絡、そして発声や動作を
合わせて「気をそろえる」ことが、コミ
ュニケーション力を高める道となります。
今こそ活力朝礼によって、働き甲斐の
ある組織を創造しようではありませんか。
営業マンのA氏は出張から会社に戻った時に、職場の仲間から「お帰りなさい、お疲れさまでした」と声をかけられると、安堵感【あんどかん】を得られるそうです。
それは子供の頃、「ただいま」と我が家に飛んで帰り、「お帰りなさい」と母親に迎えてもらった時の安堵感に似ていると言います。
皆さんの職場では、「お疲れさま」とねぎらうと同様に、「お帰りなさい」の声かけは行なわれているでしょうか。
A氏のように仕事先で緊張し、外を歩き回って疲れきって帰ってきた時、明るく優しく「お帰りなさい」と言ってもらえたなら、ホッとして元気も出てくることでしょう。挨拶から連帯意識が生まれ、自分の存在価値を確認し、やる気が起きてくるのです。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」「ただいま」「お帰りなさい」という、何気ないやりとりがお互いの連帯意識を深めます。心のつながりを実感させながら、活気と安らぎのある職場環境を築いていきましょう
今日の心がけ◆挨拶で明るい空間をつくります。
4月から新社会人としてスタートした皆さんには、一日も早い活躍が期待されています。
M機工のN社長は、自社の顧客取引きに際し、新人営業担当者に以下の三点を習得することを求めています。
1.営業マン一年生としての「心得」、2.会社を訪問する時の「マナー」、3.セールストークや自社取り扱い製品の「商品知識」などです。
中でも最も大切なことは、「しっかりした挨拶・礼儀を体に沁【し】み込ませる。技の前に人ありきだ」と、N社長は強調します。
同社の新人S君は、取引先の課長から「彼は、仕事のことはあまり知らないよ」と笑われながらも、大いに期待されています。挨拶・元気のよさが他社との差別化となって、売上額を上げているのがその理由です。
実務能力もさることながら、「相手に好かれる」「元気で明るい挨拶や返事をする」といった、正しい基本動作を身につけることが大事なのです。
今日の心がけ◆基本動作を身につけましょう
「家の手伝い100回」「読書100冊」など、自分で決めた<100回>を目指す取り組みを、滋賀県のある小学校が進めています。
「チャレンジ100」と名づけられたこの試【こころ】みは、教師や保護者に「やらされる」のではなく、児童が自分で立てた目標に向け、粘【ねば】り強く挑戦するのが目的です。
目標は児童によってさまざまで、「音読100回」「自主学習100ページ」などの学習面はもちろん、「友だちにやさしい言葉100日」や「だじゃれ100個」などユニークなものも自主的に飛び出しました。
大人でも、やらされている意識の強い仕事は、いつも以上に疲れを感じます。楽しくやりがいを感じるのは、自から決めたことを実行する時です。
少し難しい面があっても、積極的に行なう時は、物事はスムーズに進むものです。他人から言われる前に、まず自分からやるべき事柄【ことがら】や目標を設定し、その決め事に向かってチャレンジすることが大切といえます。
皆さんも「チャレンジ100」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
今日の心がけ◆自ら進んで行動します。
コンビニエンスストアのローソンは今年2月から、他部署の仕事を1日限定で体験できる研修制度を導入しました。
主【おも】に地方の支店や地区事務所で勤務している正社員が、本社の業務である経営戦略やマーケティング、広報、人事などを体験します。
その目的は、部署間の意志疎通【そつう】をよくし、店舗勤務の社員たちに会社全体の戦略の理解を深めてもらい、士気を向上させることです。
私たちの仕事も、他部署との連携【れんけい】の上に成り立つ業務が、少なからずあります。果たして、他部署との<報告・連絡・相談>は、できているでしょうか。
会社内でも、所属部署以外の業務内容や勤務形態は、案外知らないものです。そのために、連絡や報告に行き違いが生じる恐れもあります。勘違いや思い込みが重なれば、お互いに不信感が募【つの】り、仕事の意欲も低下するでしょう。
自己の仕事の質を高めるためにも、他部署の業務にも関心を持ち、社内の意思疎通を改善して、よりよい職場環境をつくっていきましょう。
今日の心がけ◆他部署の仕事を知ります。
都内でハンバーガー店を経営するS氏は、開店3周年を前に、「心配で眠れない日もありましたが、困った時にはいつも、ハンバーガーの神様に助けられました」と振り返ります。
たとえば、コーヒー一杯で粘るお客様が増えると<いい加減にしてほしい>という気持ちになりがちです。しかし、「ようこそお越しいただきました」という感謝の心でいると、その後で、お客様がどっと来店してくれるのだそうです。
また、その他の経験から、お客様、スタッフ、トイレまでも感謝の心で接しないと、「ハンバーガーの神様」は舞い降りてこないことがわかったそうです。
「ハンバーガーの神様」が存在するかどうかはわかりませんが、感謝の心は良いことを引き付ける力を秘めているのかもしれません。
S氏は、お客様はもちろん、食材を作ったり運搬してくれる人、一緒に働くスタッフ、備品など、お店に関わるすべてに感謝するようになったと言います。
私たちも感謝の心を持ち、人を引き寄せる環境を築きたいものです。
今日の心がけ◆感謝の心を持ちます。
合唱サークルに参加して5年になる壮年男性のK氏は、次のように語ります。
「合唱の中では、男性はテノール、バス、女性はアルト、ソプラノといった各パートに分かれて、同じ楽曲【がっきょく】を異なった旋律【せんりつ】で歌い
ます。どれがではなく『どのパート』も大事で、出過ぎず退【ひ】き過ぎず、それぞれの役割を果たして全体でハーモニーを生み出すことが合唱の醍醐味です」
5年間の経験から、氏は「仕事も合唱と似ている」と言います。職場においてもそれぞれの部署の業務を調和させながら、全社で相乗効果を上げてこそ、組織は活性化し、業績もよくなっていくのです。
自分の目前の仕事に全力で取り組むことにかけては、定評のあったK氏ですが、時には先走り過ぎて失敗することもありました。
「これからは周囲の業務のことも知って、調和を心がけます」とK氏は語ります。
会社に不協和音が生じていないかどうか、職場全体を意識して、自己の役割を果たしていきましょう。
今日の心がけ◆周囲との調和を意識します。
仕事に取り組む上で、重要なキーワードとなる三つの「現」があります。
第一に「現場」です。数字には表わせない要素が、現場にはあります。スタッフの士気・連帯意識の高低や職務で必要なスキルの習熟度などです。現場は改善・向上のヒントの宝の山です。
続いて「現品」です。形に表われるものもあれば、形に表われないものもあります。いずれにしても商品やサービスへの信頼感を損ねることは、即、会社の損失につながります。社会の期待に貢献できるよう、いっそう磨きをかけましょう。
最後に「現実」です。「売れるはずだと思ったのに売れなかった」などと嘆いても始まりません。問題点から目を背けて「いつか、誰かが」と受け身で楽観してはなりません。道を切り拓いていくのは、自分以外の何者でもありません。
足を運ぶ、担当者に質問をする、情報収集をするなど、社内外にアンテナを高く立てていれば、苦境を打開する方策はいくらでも出てきます。
三つの「現」を直視しつつ、一歩一歩、仕事に取り組んでいきましょう。
今日の心がけ◆現場・現品・現実をとらえ、問題を直視します。
Nさんは、お客様への手紙を書いたものの、かばんに入れたままで出しそびれてしまいました。急ぎの内容ではなかったため、帰宅する途中で出そうと思っているうちに、忘れてしまったのです。
書類の整理や机の上の整頓など、直接業務に関係のないことや、今すぐに必要とされない仕事は、後回しにしてしまいがちです。
しかし、急いでいないからと理由をつけている奥には、面倒くさい、苦手だから、といった自分の「わがまま」が隠れてはいないでしょうか。
仕事の優先順位をつけることは必要ですが、いつも後回しになっている仕事は、自分の苦手なものである可能性が高いのです。
気がついた時にすぐに取り組めば、仕事をためることなく、忘れることなく、何より自分の苦手を克服できます。
苦手なものに敢【あ】えて挑戦していくことが、職場人には求められます。どうしても後回しになる仕事は、期日を決めて取り組んでいきましょう。
今日の心がけ◆すぐに取り組みます。
仕事は、様々な人たちとのチームワークの上に成り立っているものですが、職場内のすべての人と、気を合わせることは難しいものです。理由はわからないけれど、何となく「反りが合わない」ということもあるのではないでしょうか。
「反りが合わない」とは、気心が合わないという意味ですが、刀の反りが鞘と合わないことに由来します。刀と鞘、どちらがおかしいのかを問い質しても、意味がありません。一方を変えなければ、いつまでも反りが合わないのです。
職場の人間関係においても同じで、大切なことは、苦手な相手に対して、まずは自分の方から気心を合わせていく努力です。それを形に表わした日常の行為が、「ハイ」という返事、先手の挨拶、人の話を聞くことなのです。
本誌を利用した朝礼には、その様々な習練要素が含まれています。朝の挨拶、ハイの練習、そして輪読後のリーダーの感想を聞く、などがそれです。
苦手な人が悪いのか、嫌いな私が悪いのかなどと、思い悩むことなく、変えられるのは自分だと腹を括【くく】り、職場内の協調力アップを目指したいものです。
今日の心がけ◆相手に合わせてみます。
人は何事も、初めは気合を入れて取りかかるものですが、終わりは<まあいいか>という気持ちになりがちです。
上手くいかないと、適当に放り出すことも少なくないようです。しかし、成功の秘訣は、物事の終わりにあるといっても過言ではありません。
失敗は誰にでもあります。問題は「失敗」ではなく、失敗から何も学ばず、同じ過ちを二度、三度と続けてしまうことです。大切なのは、失敗を素直に反省して、次に活かしていく「事後処理」をしっかりとやることです。
人と人との間のフォローもまた同様です。頼む場合は熱心でも、終わった後のフォローは意外に忘れがちではないでしょうか。お世話になった人に、心のこもったお礼やお詫びをきっちり行なうことは、重要な事後処理の一つなのです。
物事が出来ても出来なくても、最後をしっかりとやりとげれば、仕事の幅や人脈が広がり、次の仕事にもつながっていくことでしょう。
「最後の態度」こそ美しく、物事のピリオドをしっかりと打ちたいものです。
今日の心がけ◆締めくくりを大切にします。
大阪市内の公立中学校に20年間勤務し、荒廃した学校の立て直しに心血を注いだ原田隆史【はらだたかし】氏。独自の育成手法で、弱小であった陸上部を全国レベルの部に変身させました。現在氏は、企業研修や教師塾を主宰しています。
原田氏は、今までの経験から、教師自らがきちんと行動で示さなければ、生徒に対して説得力がないことを実感しています。そのため、実行に移すための準備を、毎日怠【おこた】ることなく続けています。
まず、講話者【こうわしゃ】として長時間の講演を行なう際、声の張りや立ち姿を最初から最後まで持続させるために、トレーニングを欠かしません。朝は出かける90分前に起床し、その後、ランニングかエアロバイクを必ず行なって身体を鍛えます。
また、「心づくり指導」をしていることもあり、使用したトイレはきちんと磨き、それによって自らの心も磨き上げます。
言葉と行動の一致が、強い説得力を生み出します。自分で決めた約束はしっかり守り、行動に移せるようにしたいものです。
今日の心がけ◆決めたことは実行します。
M氏は、自分に都合のよい仕事ばかりすることが多くなりました。
見かねた上司から、「気づいた時にサッと行動する」という「即行」を心がけるように指摘されました。
そこでM氏は、公私に関係なく行動を起こすことにしました。休日、自宅でカゴに入った洗濯物を発見。さっそく、実行に移したものの、M氏は干さずに出かけた妻を責めつつ、ぶつぶつと文句を言いながら洗濯物を干したのでした。
数時間後、帰宅した妻にM氏は、釘を刺すように「洗濯物、干しといたぞ」と言うと、すかさず妻から「帰ってから干そうと思ったのに」と反撃されました。その後は売り言葉に買い言葉、いつもの夫婦喧嘩に発展してしまいました。
翌日、それを上司に話すと、「恩を着せてはいけないよ。やったことは心に残さないこと。やるのであれば、喜んですることだ」と言われました。<やってやった>との高慢【こうまん】な心は、相手を責めることになるとM氏は反省したのでした。
M氏は仕事でも、喜びの「即行」に取り組んでいこうと思いました。
今日の心がけ◆喜んで行動します。
どのような仕事においても、新しい情報をキャッチするためには、普段から心のアンテナを張ることが大切です。
作詞家として歌謡界で活躍した故・阿久悠【あくゆう】さんは、情報キャッチとその整理のために、「日記」を活用したといいます。
大相撲の取組表の新聞切り抜きのスクラップや、台風情報、年金問題など、さまざまな分野から発信される情報を集め、「その日の出来事」として記録し続けたのです。
阿久さんは歌詞をつくるために、「日記」を一日も欠かさず克明【こくめい】に記しました。言葉のアンテナを縦横に張り巡らすことで、歌詞として使える言葉を発見していったのです。そうした作業の中から、数々のヒット曲が誕生したのです。
企業が永続していくためには、俊敏【しゅんびん】に市場の動向をつかむ努力と行動が必要です。さまざまな情報を積極的に集め、新しい発想を生み出す姿勢を磨いていきましょう。
今日の心がけ◆積極的に情報を集めます。
H氏は、足を怪我してしまいました。そのため電車に乗った際、お年寄りや体の不自由な方のための優先席に座っていました。
すると、ある駅で杖をついたお年寄りが乗ってきました。しかし、優先席も含めてすべての座席がいっぱいで、そのお年寄りは座ることができずに、困っている様子でした。
譲るべきかどうか、足の痛さと葛藤【かっとう】していたH氏。結局、隣に座って賑【にぎ】やかに会話をしている若いカップルに、氏の思いを託【たく】しました。
その時、カップルの隣に座っていた外国人が席を立ちました。そして、お年寄りのところまで歩いて行き、「ドウゾ、コチラニ、オスワリクダサイ」と席まで案内したのです。お年寄りは、笑顔でお礼を言いながら席に座りました。
H氏は、日本人が大切にしてきた思いやりの精神を、外国人から改めて教えられた気がしました。最初のひと言や一歩を踏み出す勇気を持ち、自分も譲り合う気持ちを忘れないようにしようと思ったのでした。
今日の心がけ◆気持ちを形に表わします。