Kさんは新築マンションに引っ越しました。程【ほど】なく、自治会の役員を決める集会が開かれました。Kさんはくじ引きで役員となりました。自治会長になったのは、Kさんより20歳年上の I さんです。
ある日の役員会で I 会長は、「最近、自転車を駐輪場に止めず、周辺に放置する人がいます。共有スペースの廊下に置く人もいます。自治会として、放置自転車追放のキャンペーンを実施したいと思います」と提案しました。
役員の一部から、「そんなに窮屈【きゅうくつ】に縛らなくてもよいのでは」という意見が出ました。I会長は「放置していると、通行の邪魔になります。さらに、乱雑な置き方をいいことに、いたずらする人が出てくるのです」と説明しました。
その説明を受けて、共有スペースに自転車を置いてはならない理由を、Kさんたち役員は初めて気づかされたのでした。
「海外では少しの乱雑からマンションのスラム化を生んだ例もあります。大切な資産の価値を守りましょう」との言葉に、役員たちは行動に移したのでした。
今日の心がけ◆整理整頓を徹底します
広告代理店に勤務するK子さんは、人間関係に悩んでいました。
家庭では、否定的な言葉ばかり使う夫に対してイライラが募【つの】り、職場では、先輩の言うことを受け入れられず、いつも孤立【こりつ】していました。
〈自分が悪いんだ〉と落ち込む時もあれば、〈なんであの人はいつも・・・〉と人を責めることもあり、K子さんの気持ちはいつも不安定でした。
問題解決に必要なのは、自分や相手を責めることではなく、「問題が起きた」という事実を見つめることです。大切なのは「誰が悪いのか」ではなく、「なぜその問題が起きたのか」ということなのです。
幸い、友人からの適切なアドバイスを受けて、K子さんは「問題の原因は、人より少しでもよく見られたいと思う自分の気持ちが、周囲に悪い影響を与えていたことだ」と気がついたのです。
それからのK子さんは、人の嫌がる仕事や地味な仕事を進んでやるようになりました。今ではK子さんの周りは笑顔で溢【あふ】れています。
今日の心がけ◆問題の根本を突きつめます
関東地方で地元名産品を扱うT氏が、東京へ出張した時のことです。
夕食をどこで食べればよいのかわからず、目についた大衆居酒屋に入り、食事を済ませたのでした。
翌朝、取引先に連絡をしようとすると、携帯電話がないことに気づきました。戸惑いながらも本社に連絡を取り、業務は何とか終えることができました。
しかし、携帯電話の行方【ゆくえ】はわからないままです。電話会社に連絡をして回線を止めた後、交番に紛失【ふんしつ】届けを出したものの、モヤモヤした気持ちのまま帰路につきました。
帰宅すると、出張先で夕食をとった居酒屋から自宅に電話連絡が入りました。「携帯の着歴に自宅という表示があったので、こちらにかけさせていただきました。早急に送らせていただきます」と、わざわざ連絡してくれたのでした。
T氏はこの一件に感謝し、受けた恩を忘れてはいけないと、郷土の名産品をお礼に送ったのでした。「してくださった」恩を大切にしていきたいものです。
今日の心がけ◆受けた恩を大切にします
人は、昔から太陽が沈むと身体を休め、太陽が昇るとともに起きていました。しかし成人の5人に1人が「夜更【よふ】かし」などによる睡眠不足だといわれています。
夜更かしは一度すると悪循環【あくじゅんかん】となり、物事が順調に進まず、生活のリズムが崩れていきます。そのため人間関係が上手【うま】くいかなくなり、自分を取り巻く周囲とも思うような関係が築けなくなります。
人は、24時間いつも同じに働くロボットではありません。昼には昼に機能する体の仕組みがあり、夜には夜の体の仕組みがあります。体がそうしたリズムに基づいてプログラム化され、心身のバランスがとれるのです。
体のリズムを整えるためにも「早起き」から始めてみましょう。カーテンを開けて朝の光を浴びる、朝ごはんを食べる、昼間はできるだけ体を動かす。それにより夜眠くなるリズムが生まれ、夜更かしはなくなることでしょう。
明日から荘厳【そうごん】な日の出を仰【あお】ぎつつ、清浄な空気を胸いっぱいに吸い込んでみましょう。朝の空気は、百薬にも優【まさ】るのです。
今日の心がけ◆早起きのリズムを作ります
高校教諭のTさんは、4月から『職場の教養』を活用した授業を、保健の時間に導入しました。授業の最後の10分間を「心の教育」と題し、一話【いちわ】を生徒に読み聞かせて感想を書かせています。
ある生徒は、「親からも先生からも教えてもらわなかった大切な話があり、とても良かった。毎回の授業を楽しみにしている」と感想を述べています。
ある日、Tさんの授業を校長と教頭が見学した際、「生徒にわかりやすい言葉で話しかけ、よく考えさせ、感想文を書かせることにより、生徒のためになっている」との講評【こうひょう】がありました。
本誌のみならず、人が図書から得るものは少なくありません。本はいつでもどこででも手に取ることができ、熟読【じゅくどく】・多読等によって様々な世界を知る「学びのツール」といえます。
感性や知力を高める一助【いちじょ】として、本から得る恩恵【おんけい】は図り知れません。新たな能力を身に付けるためにも、もっと本を読みましょう。
今日の心がけ◆図書から大いに学びます
K社の本部店舗担当のA部長が、同僚のB支店長の経営方針に対して、本部の意向【いこう】から大きく外【はず】れていることを注意した時のことです。
B支店長は「誰にも迷惑をかけていないし、責任は私がとるので、余計な口出しはしないでくれ」とA部長に突っかかっていきました。
そうした気概【きがい】自体は評価できますが、それが組織にとってどれだけ大きなマイナスになるかを、職場人ならば考えなければなりません。
福沢諭吉は著書『学問のすすめ』の中で、「自分の金銭なら酒色【しゅしょく】に溺【おぼ】れるのも自由であるとは言えず、その姿が世の空気を乱し、人の教育にも影響するので、その罪は決して許されない」と強く戒【いまし】めています。
自分では積極かつ自主的な行動で、周囲に迷惑など少しもかけていないと思っても、視点を変えればそうでないことは数多くあります。
職場人としてだけではなく、一人の人間として、自身の姿が誰かに影響を与えているのだと意識したいものです。
今日の心がけ◆自由と勝手の境目【さかいめ】を意識します
三重県の伊勢神宮【いせじんぐう】では、平成25年に第62回神宮式年遷宮【じんぐうしきねんせんぐう】が予定され、準備が始まっています。20年に一度社殿【しゃでん】を建替え、御装束【おんしょうぞく】や神宝【しんぽう】を新調して遷御【せんぎょ】を行なう我が国最大のお祭りとして、1300年の歴史を有するものです。
遷宮の御造営【ごぞうえい】にあたり最初に執【と】り行なわれる祭儀【さいぎ】は、神木【しんぼく】の伐採【ばっさい】に際して行なわれる山口祭【やまぐちさい】で、この度【たび】は平成17年5月でした。皇大神宮【こうたいじんぐう】の入り口に架かる宇治橋【うじばし】は昨年架け替えが終わり、宇治橋渡始式【わたりはじめしき】では多くの参拝者で賑わいました。
式年遷宮は実に8年もの歳月を準備に費やし、遷宮行事として延べ30に及ぶ祭典と行事を行ない、平成25年の遷御を迎えるのです。
企業でも同様に、次期を迎えるための入念な準備は欠かせません。しかし、年度の目標達成日が迫る最も多忙な追い込み時期と、来期の企画立案時期が重なるのは毎年のことで、熟慮【じゅくりょ】のための時間を費やすのは困難でもあります。
大切な事柄は十分に研究調査し、顧客のマーケティング動向を入念に確認するなど、次年度の経営計画策定のための準備も万全に整えたいものです。
今日の心がけ◆準備に時間をかけます
「社員のやる気が会社を救う」という話を耳にすることがあります。
経営が順調な会社には、明るく、協力的で、喜んで働く社員が多く、社内はやる気に満ちています。そして、社員一人ひとりが、会社の与える目標とは別に、個人的な目標を持っている人が多いものです。
その目標とは、単なる憧【あこが】れや願望といった、漠然【ばくぜん】としたものではありません。明確で具体的、さらには、少々の無理をすれば必ず届く、というものです。
つまり、会社の大きな目標を期間や項目別に細分化【さいぶんか】し、それを自分の身近な目標として立てるのです。そして、「できることを、即【そく】その場でやる」など、一つずつ着実に達成していくのです。
仕事の成果が上がれば、やる気が出てくるものです。身近な目標の達成は喜びとなり、次の目標を達成したいという気力が湧【わ】いてくるものでしょう。
社員のやる気は、会社の目標を達成するだけでなく、会社を発展させていく原動力なのです。
今日の心がけ◆身近な目標を達成させます
新居を構【かま】える予定のMさん夫婦が、冷蔵庫を買うためにA電気店を訪れました。
以前、別の電気店で購入しようとした時に、押しの強い店員が何とか売ろうとして、夫婦が望まない情報を一方的に説明されたことがありました。
その応対に嫌悪感【けんおかん】を抱【いだ】いていたMさんは、気になる商品があるものの、A店の店員に対しても猜疑心【さいぎしん】を持ち、商品の情報を聞くのをためらっていました。
自分で判断できずにいたMさんは、思い切って近くにいた年配の店員に尋ねてみました。すると二人が望む条件をよく聞きながら、その商品の特徴や、使用したお客様から意見された点などを、具体的に話してくれたのです。
使用する側の立場となって本音で商品を品評【ひんぴょう】し、正直に情報を提供してくれた応対に夫婦ともども感激し、すっかりその店員のファンとなりました。後日、揃える予定の電化製品のすべてを、その店員を通して購入したのです。
商品の情報を伝えるだけが接客ではありません。お客様の求めていることを感じ取り、それに適【かな】った対応をすることが、真の接客といえるでしょう。
今日の心がけ◆対応力に磨きをかけます
世界最高峰のオーケストラであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団【かんげんがくだん】は、来年春の定期公演で、日本人指揮者の佐渡裕【さどゆたか】氏を起用すると発表しました。
佐渡氏は音楽大学ではフルート専攻でしたが、小学校の卒業文集の将来の夢では「ベルリン・フィルの指揮者になる」と堂々と記【しる】していました。
「どんな小さな光でも、見えた瞬間にそれは必ず通じていると思って、とことん向かっていく」という佐渡氏。20歳前後に指揮者への道をさらに強く志すと、高校の吹奏楽部のコーチなどをしながら、努力を積み重ねていったのです。
私たちも「このような仕事をしたい」「お客様に〇〇を伝えたい」という夢や目標を持つことで、自己や周囲との関係、理想の社会像が具現化【ぐげんか】されていきます。
夢を持ちつつ生きるということは、自分の価値観に沿って生きることでもあり、充実感を持って過ごせることにもなるのです。
一人ひとりが夢を持って目標に取り組むことで、良い影響が現われてきます。真っ直ぐ目標に向かい、夢を現実に引き寄せる力を培っていきましょう。
今日の心がけ◆夢を持って目標に取り組みます
新入社員の皆さんは、入社後数ヵ月が過ぎ、ある程度は仕事に慣れてきたはずです。更【さら】なるステップアップとして、次の「三かけ」を意識していきましょう。
1.「汗をかけ」。まず動くことです。汗をかくほどに、とにかく何事にも一所懸命に取り組むのです。最初から腰が重いようでは、先々【さきざき】が思いやられます。
2.「恥【はじ】をかけ」。物事に挑戦すれば、失敗はつきものです。失敗を恐れれば何もできません。キャリアが浅いうちの失敗は、将来の貴重な糧【かて】です。
3.「文をかけ」。パソコン全盛の時代ですが、手書きには書き手の心が反映されます。その時その場の思いを託すように、手紙や日記を書くのもいいでしょう。文を書く行為そのものを習慣づけることに、大きな意味があります。
職場で大切な事柄は、昔も今も変わらないものです。「三かけ」のどれもが社会人として必要ですが、特に経験の浅い人には必須といえます。
自分自身にテーマを課し、心身を律することで、仕事に貢献【こうけん】できる力をさらに磨いていきたいものです。
今日の心がけ◆自らに課題を与えます
飲食店で店長として働くM氏が、他の支店で店長として働く先輩と、食事をした時のことです。M氏は所属支店の業績が振るわないことを打ち明けました。
すると先輩は、「M君は電話の声が暗いよ。会って話す時には感じないけど、電話では『機嫌【きげん】が悪いのかな』と思うことがあるよ」と指摘【してき】しました。
さらに、「職場の雰囲気を暗くしている面もある。まずは電話を含めて、声の調子を明るくしてみたらどうだろう」と助言【じょげん】しました。
良い話題は気軽に言えても、苦言【くげん】は言いにくく、とりわけて基本的な事柄は年齢を経ると言われなくなるものです。だからこそ、周囲の助言に基づいて行動することは、今までになかった自己を発見できる場合があるものです。
最初は戸惑いを覚えたM氏でしたが、「先輩もあえて言ってくれたのだ」と思うと、感謝の念が湧【わ】いてきたのでした。
「思いがけない指摘【してき】にこそ宝あり」と心して、先輩や同僚など周囲の助言を活【い】かしていきたいものです。
今日の心がけ◆周囲の助言に耳を傾けます
会社や店舗には、各々【おのおの】の個性があります。個性とは特長であり、他社にはない「売り」となるものです。
味や技術で他店と差別化を図【はか】っている店は、例えばラーメン一杯で千円を超える値段でも、長蛇【ちょうだ】の列ができるところもあります。個性が出しにくい業種では、価格面での売りを強調しています。
そのような売りを基本としながら、忘れてはならないのは「お客様に対してのサービス」でしょう。サービスとは「受けた側が感動してくれる体験」です。人に感動を与えるには、社員一人ひとりの人間力に磨きをかけることが大切です。
その養成法の一つが、職場での活力朝礼です。挨拶やマナーの実習、そして本誌の輪読・感想発表を一日に一回繰り返して行なうことで、人としての魅力が増し、会社や店の個性がつくられていきます。
お客様への様々なサービスには、個々人【ここじん】の力量【りきりょう】が反映されます。企業としての売りと個人としての売りの相乗効果で、世に大きくアピールしていきましょう。
今日の心がけ◆お客様に感動を与えます
いつも楽しく仕事ができればいいのでしょうが、職場では様々【さまざま】な要因【よういん】によって、「心が疲れているな」と感じる場面があります。
心が疲れると、肩のこりや首のこり、背中の緊張、胃腸の不調など、体にその影響が表われます。体がシャキッとせず、姿勢が悪くなる傾向があるようです。
整骨【せいこつ】・鍼灸院【しんきゅういん】を営【いとな】む原幸夫【はらゆきお】氏は、背中を丸めたいわゆる「ねこ背」や、見た目には姿勢がよく見えるが、腰を反らせて腰骨に過度の負荷を与えている「姿勢がよく見えるねこ背」があると指摘します。
姿勢の悪さが呼吸を抑制し、血流障害や内臓を圧迫【あっぱく】する可能性が高いといわれます。心の状態の悪さが姿勢を悪くし、体を損【そこ】ねるという悪循環【あくじゅんかん】を起こします。
姿勢を良くするコツとして、「意識して肩の力を抜く」「視線をやや上向きにして歩く」など、ごく簡単にできるものから習慣的に実行していきましょう。
心と体は相関【そうかん】関係にあります。姿勢を正すと体調が整い、心の明るさも取り戻すことができます。気力を発揚【はつよう】する第一歩として、姿勢を大切にしたいものです。
今日の心がけ◆姿勢を正します
良い準備は、良い仕事につながります。皆さんは日頃、良い仕事をするための工夫を何かしているでしょうか。
スポーツ選手が本番前に、独特の一連の体操をしているのを見かけることがあります。これは、心と体の緊張をほぐし、本番に向けて最高のコンディションに持っていく狙【ねら】いがあるといわれています。
それは、「プリショット・ルーティン」(繰り返し行なう本番前の準備行為)と呼ばれています。良い結果を出すために、最も重要な行為の一つとして挙げられているのです。
出版会社に勤めるSさんは、職場の朝礼に臨む際、できるだけ明るく元気な声を出して、動作にメリハリをつけるようにしています。Sさんにとっては、それが自分の気持ちを高揚【こうよう】させる儀式で、一日のやる気につながるからです。
誰もが、いつも絶好調というわけにはいきません。だからこそ、自分なりの「儀式【ぎしき】」でコンディションを整え、今日一日を楽しく元気に働きたいものです。
今日の心がけ◆自分の儀式を確立します
今年7月、体長約5.5メートルにも及ぶジンベイザメが、千葉県館山市【たてやまし】沖に設置された定置網【ていちあみ】にかかりました。
もともとジンベイザメは、世界中の熱帯・亜熱帯・温帯の暖かい海域に生息しています。日本近海では九州や四国の海域で、その姿が確認されることは以前からありました。しかし、東京湾で捕獲【ほかく】されることは珍しいといいます。
近年、海面水温や気温は世界規模で上昇傾向にあります。関係機関の報告によれば、その原因として、温室効果ガスによる地球温暖化の影響の可能性があることが指摘されています。
普段は現われない海にジンベイザメが見られたのは、環境問題が深刻化していることを示唆【しさ】する警鐘【けいしょう】と捉【とら】えることができるでしょう。
ゴミを減らす、電気やガソリンなどのエネルギーを大切に使うなど、職場においても家庭においても、今後もより一層、環境保護への取り組みに力を注いでいきたいものです。
今日の心がけ◆環境問題に関心を寄せます
毎日の生活から切り離すことのできない金銭ですが、その使い方によって、「生きた金」「死んだ金」になると言えるでしょう。
無駄使いや浪費という言葉に代表されるように、生活する上で必要のない部分に大きく費やした金銭は、「死んだ金」と言えるかもしれません。
ストレス解消のための衝動買いや、過度のギャンブルなどでは、一時的に欲求を満たすことはできても、本当に心が豊かになるはずはありません。欲望のままに深くのめりこむならば、家族を苦しめる場合さえあります。
では生きたお金の使い方とは、どのようなものでしょう。浪費を極力しないのはもちろん、支払うべき金銭は喜んで出すことです。
さらに「本当に必要な時に出す」「家族や周囲が喜んでくれるものに出す」など、明確な意志を持って金銭を使えるとすれば、それが最上【さいじょう】でしょう。
支払った後に気持ちがよく、清々しい思いになれるなら、それは「生きた金」なのです。充実感や満足感が得られるお金の扱いを心したいものです。
今日の心がけ◆お金を活かして使います
人は人生において、いろいろな希望や目標を掲【かか】げながら生きています。
自分自身に対する希望や目標は、高目に掲げるものです。しかし、仕事のこととなると、結果責任や未達成の場合の面子【めんつ】などを考えて、到達可能な目標を設定しようとする傾向があるようです。
かつて、大手スーパーマーケット・ダイエーの再建を託された林文子【はやしふみこ】氏は、自動車販売会社での経験を通して、次のような信念を吐露【とろ】しています。
「目標をどのレベルに置くかというと、私の場合はジャンプしたぐらいでは届かないところに置きます。自分の力の限界を知る意味でも、あるいは自分の限界を押し広げる意味でも、より高い目標設定が大事になってきます。
目標設定は、自分の意欲をかき立てるばかりか、次の一歩を踏み出すための具体的な材料を集めるためにやるのです」
プロとは、常に限界に挑【いど】み、何回となくそれを超えた人を言うのでしょう。私たちも常に目標を掲げ、本物のプロを目指そうではありませんか。
今日の心がけ◆限界に挑みます
山本さんは最近、人の名前を度忘れすることが多くなり、仕事上で何かと支障【ししょう】をきたしていました。そのような山本さんを見ていた同僚が、ある日、次のようなアドバイスをしました。
「若い頃のように、一度で人の名前を覚えることが難しいのであれば、できるだけ覚えたい相手とたくさん言葉を交わすことだ。また、今まで何気なくやっていた挨拶【あいさつ】も、一工夫【ひとくふう】してみるといい」
そして具体的な例を提示しました。1相手の名前を呼んでから挨拶をする、2フルネームで名前を覚える、3覚える人と覚えない人を区別する、4グループの場合は代表者一名に絞【しぼ】って覚える、などです。
「肝心【かんじん】なことは、名前を覚えたい相手に対して、感謝と愛情を持って接することだ」との同僚の言葉を、山本さんは真摯【しんし】に受け止め、すぐ実践【じっせん】に移しました。
その後、多くの人の名前を記憶することができ、必要な時に必要な人の名前が自然に出てくるようになったのです。
今日の心がけ◆感謝と愛情を持って人に接します
Mさんは研究者として、様々な執筆【しっぴつ】や発表をこなす日々を送っています。
ある時、幾つかの執筆の締め切りが重なり、どうにも動きがとれない状態となりました。それに加えて、世話になっていた研究室が引越しをすることになり、「手伝ってほしい」との連絡が入り困り果てていました。
しかし、「こんな時こそ、自分のことばかり考えていけない」と思い直したMさん。引越しの手伝いに出向き、仲間と共に汗を流しました。
忙しい時には、自分のことばかりに意識が向いて、周囲の人の気持ちを忘れがちになります。そのような状況でも、周囲に意識を向け、さらに行動できる人を、周りの人たちが放っておくはずがありません。
Mさんは、引越しに来ていた仲間から「そんなに大変な状況ならば、資料の整理を手伝うよ」と思いがけない手助けをもらったそうです。
「忙しい」の「忙【ぼう】」の文字は「こころを亡くす」と書きますが、忙しい時にこそ、周りに気を配る心の余裕を持っておきたいものです。
今日の心がけ◆人を喜ばせる働きをします
K氏には今年4月から社会人になった娘がいます。小学生の頃は会社から帰ってくると「お帰りなさい」と玄関まで走って迎えに来てくれ、一緒にお風呂にも入るくらいのお父さんっ子でした。
ところが中学生になった頃から、父を避けるようになりました。高校時代などはK氏が帰宅すると、娘は部屋にこもってしまうようになったのです。
ある日、友人から、「上京して電話連絡のつかない息子に毎日葉書を出した結果、ひょっこり戻ってきてくれた」という話を聞きました。早速、K氏は大学に進学し、上京している娘に、葉書を書き続けるようにしたのです。
葉書を書き続けて5年、社会人となった娘の住む町にK氏は夫婦で訪れました。指定された駅前に時間通りに行くと、娘が「あそこを見て」とビルの電光掲示板を指差しました。
すると「お父さん、お母さん、これまで迷惑かけてごめんなさい」と映し出されたのです。K氏は「継続は力なり」の意味を、身をもって体験したのでした。
今日の心がけ◆物事を継続して行ないます
歴史的な達人や偉人【いじん】は、厳しい修練の中に「余地」を大切にしました。「人との交際の時に譲れるだけのものを十分残し、ゆとりのある形で付き合う」という意味として、吉川英治【よしかわえいじ】は著書の中で、それらを表しました。
剣豪【けんごう】宮本武蔵【みやもとむさし】はある時、師と仰【あお】ぐ沢庵和尚【たくあんおしょう】から「お前は強すぎる」とたしなめられます。その意味を理解し得【え】ないまま、武蔵は名妓【めいぎ】といわれた吉野太夫【よしのだゆう】に悩みを伝えに行きます。それを耳にした吉野太夫は、ある行動をとります。
突然、自分の大切にしていた琵琶【びわ】を、武蔵の見ている前で打ち壊したのです。
その琵琶の内部を見せ、「よい音を出す琵琶の構造は、木部【もくぶ】の伸縮が可能で、張りすぎた音を和らげるための遊びの部分がある」と言いました。
吉野太夫は、木部の継ぎの部分に少しずつ、ゆとりのあることを示し、人間関係でも同じように「余地」が必要であることを示唆【しさ】したのです。
ゆとりを見いだすことが難しい現代です。だからこそ、誤差や錯覚を包みこんでいく「余地」を心がけ、心豊かな生活をしたいものです。
今日の心がけ◆ゆとりをもって生活します
現在、大きな仕事を抱えているY君は、いつも張り切って出社しています。
反面、この仕事を飛躍【ひやく】のビッグチャンスと捉【とら】えるあまり、絶対に結果を出そうという思いで、少し神経質になっていました。
見かねた先輩がY君にアドバイスをしました。「頑張る姿は溌剌【はつらつ】としていい。でもピリピリとした緊張感が、周りに悪い影響を与えてしまっている」
確かに、Y君が張り切っている様子は、全体の雰囲気を高揚【こうよう】させるのに一役買ってはいるのですが、時として、その場から浮いてしまうことがあります。
電話の応対の際に、語気や口調が異様に強かったり、上司に対するハイの返事すべてが、まるで絶叫するかのような「ハイ」なのです。
一人の覇気【はき】や情熱が、周囲に波及するケースはあります。しかし、それらが過剰な場合、かえってマイナスの空気を生むことに注意しなければなりません。
突出した行為がエネルギーを常に高めるとは限りません。時と場合を考慮し、協調の心も忘れずに、職場生活を送りたいものです。
今日の心がけ◆協調する心を育てます
「説明責任」「自己説明」など、昨今【さっこん】は「説明」という言葉をよく耳にします。
ある日、K氏の自宅にY社より、車検の見積り案内の電話がありました。いつでも見積ると言われたため、K氏は早速、休日にY社へ車を持って行きました。
すると、「今日は予約でいっぱいです。あらかじめ電話をしてご来店ください」との返事でした。Y氏が「いつでも見積ると電話があったから来たんですよ」と伝えても、「申し訳ありません」の一点張【いってんば】りでした。
そこで、別の社員に経緯【けいい】を話すと、「弊社【へいしゃ】の見積りには2種類ありまして、基本的な車検の見積りはすぐにできます。ただ、実際に車を拝見し、修理箇所【かしょ】がないかどうかを調べるには時間がかかるため、予約をいただいています。説明不足で申し訳ありませんでした」と返答され、K氏はとりあえず納得したのです。
理由や事情を話さずに結論だけを言ったり、「相手はわかっているはず」と決めつけてしまうと、思いもよらぬ結果を招【まね】いてしまいます。
不慮【ふりょ】のトラブルや誤解がないよう、明確に説明をしたいものです。
今日の心がけ◆説明不足に気をつけます
職場人においては、部署の異動や配置転換があります。
自分の希望に沿っていれば、多少のストレスはあっても仕事に就くことができますが、そうでない場合は憂鬱【ゆううつ】になったりします。
それは、人によっては異動や配置転換により、新しい仕事や人間関係などの不安が増幅【ぞうふく】し、自分の未来に明るいイメージを描けなくなるからでしょう。
確かに、同じ業務に長年携【たずさ】わっていれば、その業務のエキスパートにはなれます。しかし捉【とら】え方によっては、この異動や配置転換が、逆に貴重なチャンスともなりえます。
新しい環境に身を置くことは、それまで知らなかった世界を経験できる貴重なことです。新たな学びや、またとない自己の成長をもたらしてくれるチャンスが少なくないからです。
異動や配置転換だけでなく、自分ではどうすることもできない事柄に対しては、自分の心の健康のためにも、それを真正面から受け止めたいものです。
今日の心がけ◆新境地をチャンスと捉えます
失敗を報告するのが苦手な事務員のKさんは、以前からその正直さに敬服【けいふく】していた先輩に、相談を持ちかけました。
先輩は、正直の秘訣【ひけつ】は「『正しくなければならない必要性』を手放すことだ」と教えてくれました。
「正しくなければならない必要性」とは、一人で生きる力のない子供が、家族や周囲の人たちに対して、自分の意志に反して期待通りに振舞【ふるま】うことです。それにより愛を獲得し、生き残ろうとする「サバイバル戦略」が元になっています。
人は失敗を隠したがるものですが、その理由の根底【こんてい】には、周囲の愛を失うことによって生存が脅【おびや】かされるという、子供の頃の恐れがあったのです。
先輩は、この「正しくなければならない必要性」を手放そうと、自主独立の気概【きがい】を奮【ふる】い立たすうちに、あっさりと物が言えるようになったというのです。
先輩の話に感銘を受けたKさんは、以後、失敗したら自分自身に正しくあることを第一に心がけ、すべてを正直に報告しようと決意したのでした。
今日の心がけ◆自分に正直になります
意見を求められた時、自分の考えをきちんと伝えられることは、とても重要なコミュニケーション能力です。それは話し言葉だけでなく書き言葉も同様です。
しかし、自分の思いを言葉にしたり、企画を創案するには、普段から情報を吸収しつつ温めておかなければ、そうそうできることではありません。
作家の奥野宣之氏は、「ひらめき脳」より「レスポンス脳」を目指そうと薦めています。レスポンス脳とは、外部からの情報を刺激にして、アイデアを生み出していく思考の引き出しのことです。
大切なポイントは、普段から刺激を受けやすい土壌を作っておく身近な心がけです。例えば、居酒屋では毎回、違った料理を注文する、コミック本から学術文庫まで幅広く読む、男性でも「女性週刊誌」に目を通すなどです。
いろいろな分野に関心を広げ、刺激を受けることが、やがて自分の意見やアイデアを育てる核になるというわけです。まずは「自分はこういう人間だから」と限定している、一種の「壁」を打ち破る勇気を持ちたいものです。
今日の心がけ◆異質の吸収に努めます
『あんぱんまん』の絵本の作者である、やなせたかし氏は、60歳を過ぎてから、〈子供の本を描くことが自分の天職である〉と思えるようになりました。それまでは、デザインや漫画を描きながら、何をやるべきかと迷っていたそうです。
やなせ氏は「すごい満員電車でもずっと降りずにいれば、ある時、席は空【あ】くんです。僕なんて終点近くでやっと座った」と自身の生涯を表現します。
やなせ氏は、たとえ天職に出合えなくとも、それはそれでよく、何かを求めながら生きていくことが大事だと説きます。
私たちが、いつ、どのような形で天職と出合えるのかは予測できません。しかし、自ら出合いを求めない限り、天職を得ることはないのです。
まずは現状の仕事に対して、ただひたむきに打ち込んでみることです。その道のプロフェッショナルとなるべく、深く追求し続けましょう。
天職との出合いを信じ、探し求め、今を一所懸命に生きるのです。そうすることにより、自ずと「自分は何のために働きたいのか」が見えてくるはずです。
今日の心がけ◆仕事にひたむきに取り組みます
入社2年目のKさんには良き先輩がいます。Kさんが所属する部署の上司のU氏です。入社時は話しをする機会はなかったのですが、新人歓迎会で隣り同士になったことをきっかけに、話すようになりました。
それ以来、トイレなどで二人きりになると、ニコニコしながら声をかけてくれます。上司と部下の枠【わく】を超えて大所【たいしょ】からの意見を聞きたい時には、U氏がトイレや喫煙所【きつえんじょ】に立つのを待って追いかけることもあります。
先日、洗面所で並んで歯を磨いている時に、U氏に「今日の会議でのK君の発表はとてもよかった」と誉【ほ】められました。そして、「あと2、3分縮められたら、もっと聞きやすかったと思うよ」と助言も付け加えてくれたのです。
話しを聞く側の立場で発表することの大切さを、Kさんは教えられました。Kさん自身、つい力が入って長くなっていたことを自覚はしていましたが、面と向かって端的【たんてき】に指摘してくれたのはU氏だけでした。
職場において、ちょっとした会話を貴重な勉強の場としていきたいものです。
今日の心がけ◆工夫して対話の場を持ちます
企業の目的を表現し、仕事の方向性を示すのが「経営理念」です。経営理念は私たちの職場生活と、どのように関わっているのでしょうか。
第一に、経営理念は「意思統一の中心」になります。集団の力を発揮するには、何のために仕事をするのかという、社員全員が心を向ける核【かく】が必要です。経営理念は、同じ職場で働く者の心を一つにする拠【よ】りどころとなります。
第二に、「決定の判断基準」となります。職場では、顧客【こきゃく】との交渉などで、マニュアルにはない判断が求められる場合があります。その際、その時その場にふさわしい決断と行動の指針【ししん】を、経営理念は示してくれます。
第三に、「問題改善の指標【しひょう】」になります。仕事上の失敗の原因には、経営理念の内容に反した思いや行動が多く見られます。経営理念は、問題が生じた時にその原因を発見し、改善の手立てを見いだす手がかりとなります。
会社の理想を表わした経営理念は、企業にとっての希望の旗印です。内容を改めて吟味【ぎんみ】し、朝礼等ではその理想に思いを馳【は】せつつ言葉にしていきましょう。
今日の心がけ◆自社の目指すものを知ります