突然の人事異動が決まり、I さんは新しい部署での仕事がスタートしました。
不安や戸惑【とまど】いを感じながら、日々の業務に取り組んでいたのです。
何をどうしたらいいのかわからず、四苦八苦【しくはっく】していた時に、上司から「わかる、わからないではない。頭の中が未整理でも、消化不良でもいいから、とにかく動きなさい」とアドバイスされました。
I さんは〈とにかく動く。動きながら考える〉を念頭に業務に取り組むようになり、半年が経過しました。その頃には、上司が何を求めどう考えているのかを、察【さっ】することができるようになっていたのです。
I さんは「上手くいかなくても試行錯誤【しこうさくご】をしながら動くことで、理解できることが徐々【じょじょ】に増えました」と自己の成長を振り返ります。
じっくりと物事に向き合い、考えることが必要な場合もあります。しかし、考えるだけでは成長はありません。自分に何ができるのかを考え、そして行動へと移すことが、物事を着実に前進させるのです。
今日の心がけ◆動きながら考えましょう
中堅社員のA氏は、入社間もないころに行なわれた新人研修でのある体験を、10年経った現在でも一つの教訓としています。
それは、新入社員が一人ずつ壇上に立って、自己紹介をする場で起こりました。人前で話をするのが苦手なA氏は、「えーと、私は緊張すると、顔が赤面してしまいます」と、しどろもどろで言いました。
それを聞いたある新入社員が、「顔が赤くなることを赤面というのであって、『顔が赤面する』という表現はおかしい。『骨折が折れる』『頭痛が痛い』というのと一緒だ」と得意気【とくいげ】に言い、A氏は笑いものにされてしまったのです。
悔しさと恥ずかしさでさらに赤面したA氏でしたが、新人研修を担当した先輩社員の一言に救われました。「相手の間違いを正すことは簡単である。相手に、その間違いを気付かせるのは難しいことだ」というものです。
現在、部下を持つ身となったA氏は、彼らの質問や相談に対して安易【あんい】に答えを出さず、部下が回答を自ら出せるような環境作りに力を注【そそ】いでいます。
今日の心がけ◆過去の失敗を現在に活かしましょう
お盆休みが過ぎ、夏の全国高校野球も終わり、朝晩にわずかながらも秋の気配が感じられるようになりました。秋は「実りの秋」といわれ、多くの作物が収穫【しゅうかく】の時季【じき】を迎えます。
「春植えざれば秋実らず」という諺【ことわざ】があるように、実りを得【え】るためには春の種蒔【たねま】きが必須です。加えて梅雨【つゆ】の長雨【ながあめ】や夏場の草取りなど、様々な要件を経【へ】て初めて「実りの秋」を迎えることができるのです。
仕事においては、こうした働きのないところに成果だけが生まれることはありません。一定の成果を上げるためには、それ相応の働きが必要です。
しかし、人は往々【おうおう】にして成果に意識が集中し、その原因を振り返ることを忘れてしまいます。成果の善し悪しにかかわらず、その成果を生み出した働きが明確になれば、次へのステップにもつながります。
今、この瞬間の働きが、近い将来に現われる成果に通じると自覚して、無駄のない働きを意識しつつ実りある秋を迎えましょう。
今日の心がけ◆将来の成果を意識して仕事に臨【のぞ】みましょう
新入社員のY君は、同僚【どうりょう】のK君の欠点ばかりが目につきます。挨拶【あいさつ】や時間にルーズであり、Y君にとって当たり前の行動がK君にはできません。
そのような事態に腹を立ててばかりいたY君。見かねたM先輩が「欠点にはその背景があるものだ。きっとKには相応【そうおう】の負の経験があるのだろう」と言いました。そして「君にも欠点が一つや二つあるのではないか」と問い掛けました。
振り返るとY君にも思い当たる節がありました。それは人づき合いが苦手なことでした。学生時代に友人間でいざこざがあり、以後、人間関係を良くしようと努力はするものの、なかなか上手【うま】くいかずに苦しい思いをしてきたのです。
先輩の助言をきっかけに、Y君は「きっとK君にもいろいろな過去があったのだろう。彼も良くなろうと努力しているに違いない」と思えるようになりました。それ以来Y君は、自然と腹を立てることが少なくなっていきました。
誰もが欠点を持っています。その欠点を改善に向かわせる一助【いちじょ】として、相手の立場で言葉を添【そ】える配慮を心【こころ】したいものです。
今日の心がけ◆配慮ある言葉を掛けましょう
困っている時に親身【しんみ】になってもらえることほど、嬉しく有り難いものはありません。Tさんは出張先で財布を失くしてしまいました。
列車の切符を購入する時に、財布をその場に置き忘れたようです。そのまま空港に行き、飛行機で次の出張先へ向かう間にそれに気づいたのです。
Tさんはあわてて到着先の空港のカウンターに行きました。対応した女性係員は、事情を説明するTさんの様子を察し、すぐに駅へ問い合わせてくれました。
その後、駅に財布が届けられていることがわかると、手を尽くし、「次の飛行機で届けるようにします」と段取りまでつけてくれたのです。
仕事を終えたTさんが空港に行くと、別の社員が「お話は承【うけたまわ】っております。これですね」と財布を手渡されたのです。
何人もの思いやりの心がバトンリレーのようにつながり、無事に財布を手にすることができたTさん。感動と感謝を深め、人に親切を尽くす尊【とうと】さを改めて教えられたのでした。
今日の心がけ◆相手の身になって対応しましょう
人事異動などで就【つ】いた新たな部署では、良好に推移【すいい】している業務も懸案【けんあん】となっている事項も、包括【ほうかつ】して受け継がなければなりません。
その際、軌道【きどう】に乗った仕事はスムーズに継続できますが、積み残しの業務に直面する場合もあります。そのような際には、前任者【ぜんにんしゃ】を責める心や嫌う心、また改善に対する猛烈【もうれつ】な欲求が頭をもたげます。
しかし、引き継いだ業務に対し、まずは前任者の手法をありのままに踏襲【とうしゅう】することが肝要です。「これまで本当によく取り組んでいただきました。謹【つつし】んで業務を遂行【すいこう】いたします」と感謝する心が、次へのステップとなります。
前任者の足跡【そくせき】を素直にそのまま追うことで、工夫・改善に臨【のぞ】んだ部分がわかるのです。どのような壁があり、どのようにして現状になったかという背景を実感できます。そして、これから打つべき新手【あらて】が自【おの】ずと見えてくるのです。
「成果が出たのは前任者のお蔭だ」「マイナスの結果は全て自己責任である」と受け止め、前任者への感謝と礼を怠【おこた】らずに現状突破【げんじょうとっぱ】を図【はか】りたいものです。
今日の心がけ◆よき継承者になりましょう
Yさんはショッピングモールや劇場などが併設【へいせつ】されている、大型温泉施設に宿泊しました。
翌朝、Yさんは他の利用客と一緒に、駅へ向かう送迎バスを待っていました。しかし、予定の時刻になってもバスが来る気配がありません。利用客が時間を気にし始めた頃、施設の係員がバス乗り場まで走って来ました。
そして、「申し訳ございません。途中で車のトラブルがありました。別の車を手配しますので、少々お待ちください」と頭を下げました。その言葉に一同はホッとしたのです。
定刻より遅れての出発となりましたが、臨時の運転手から「4名様ですので、決められたバス停に限らず、皆様それぞれに降【お】りる場所を言っていただければ、そちらまでお送りします」との言葉がありました。
Yさんは感激し、終点の駅へもほぼ予定通りに到着したのでした。どのような状況下でも、お客様の立場に立った対応が、信頼関係を構築していくのです。
今日の心がけ◆お客様の立場になって対応しましょう
無縁社会【むえんしゃかい】が静かに確実に広まりつつあると懸念【けねん】されています。
人とのつながりが切れ、家族とのつながりが切れ、企業とのつながりが切れ、やがて社会とのつながりが切れていくという状況です。
「縁【えん】」には、つながりや結びつき、関係性という意味があります。それがさらに深まると、絆【きずな】という表現になってくるでしょう。
「これも何かの縁ですね」「生まれた時から二人は赤い糸という縁で結ばれていた」「あいつとはクサレ縁でね」など、日常会話の中で使われています。しかしつながりは、目で見て確認することはできません。
つながろうとする意識を強く持たなければ、時の経過とともに縁は薄れ、切れやすくなってしまいます。昨今【さっこん】は過剰なつながりを嫌う傾向がありますが、良好なつながりは大切にしていきたいものです。
「挨拶は心と心をつなぐ金の鎖【くさり】」という表現があります。まずは家庭、職場、近所の人たちに、明るく元気な挨拶を投げかけてみましょう。
今日の心がけ◆明るく挨拶を交わしましょう
お客様や知人に携帯電話を掛ける際、マナーとして「今お話ししても大丈夫でしょうか」と一言【ひとこと】添えることが大切です。
電話は、相手が目の前にいないため、つい自分を中心に話を進めてしまいがちです。まずは、相手の事情を確かめる言葉を掛けることが大切です。こちら側は電話で話せる状態でも、相手は対応できない可能性があるからです。
公共の場所では、周りの人たちへの心遣【こころづか】いが必要です。電車内ではマナーモードにし、電車の優先席付近や病院内での電源オフは当然です。また、電話に出る場合には大声で話さないことも常識です。
これらのマナーの基本は人を思いやる心です。医療機器を使っている人に配慮したり、周囲の人が不快にならないような心配りです。相手に配慮し、お互いにすがすがしいマナーで生活できるよう心がけたいものです。
私たちは仕事を通して社会に貢献していますが、まずは社会人として周囲の人を思いやる心で行動していきましょう。
今日の心がけ◆思いやる心を持ちましょう
「無【な】くて七癖【ななくせ】」という諺があるように、誰もがクセを持っています。その一つに、他人【ひと】の話をよく聴かないクセを持つ人は少なくありません。
スーパーマーケットのK店長もかつてはそうでした。独【ひと】り善【よ】がりの考えには限界があり、そこから導【みちび】き出される営業成績は余りよくありませんでした。
ある日K店長は、〈自分には他人の意見をしっかり聴かない悪いクセがある〉と気づき、従業員の考えを最後まで聴く習慣を身に付けようと思いました。
K店長は自分と異なる意見を聴くと、その場で口出ししたくなりましたが、それをぐっとこらえて、最後まで聴くことに徹【てっ】しました。そして、「なるほど」と頷【うなず】きながら、自分の中にすべてを受け入れるようにしたのです。
それはとても忍耐のいることでした。しかし、最後まで聴くことによって、時には自分の考えよりも従業員のほうが、素晴らしい改善案を持っていることがわかりました。やがて店には活気が表われ、お客様も増えていきました。
自分以外は皆わが師です。よく聴くという良い習慣を身に付けたいものです。
今日の心がけ◆よい習慣を身に付けましょう
「自由」という言葉に、私たちはどのようなイメージを持つでしょうか。国語辞典には「心のままであること。思う通り。自在【じざい】」などの表記【ひょうき】がありますが、仏教の世界では以下のようにいわれています。
自由とは「自【おの】ずからに由【よ】る」と解釈【かいしゃく】されており、人が何らかの精神的な囚【とら】われから解放され、その人本来の姿であることを指します。元来【がんらい】自由とは、こうした意味あいも含んでいたといえるでしょう。
社会生活を送る中、不足や不満、心配や恐怖など、マイナスの心に囚われてしまった経験は誰もがあるでしょう。しかし、原因は外にあっても、心の状態は自分自身が作り出しているのです。
仕事においても、一度感情が乱れてしまうと、冷静な判断ができなくなります。マイナスの心が起こったならば、いったん止まって、その心から自由になるイメージを持ちましょう。囚われていた心に気づくと、打つべき手段が見えてきます。
様々な感情に惑【まど】わされることなく、心穏【おだ】やかに実力を発揮したいものです。
今日の心がけ◆穏やかな心でいましょう
人が他者【たしゃ】に対して抱【いだ】く第一印象は、視覚【しかく】から入る要素が大きいといわれます。
見た目だけでは人は判断できませんが、社会人として、好感の持てる身だしなみや身のこなしは基本的マナです。ビジネスシーンにおいて、初対面でも好印象を与えられるかどうかの一つに、名刺の受け渡しがあります。
最近は同時に名刺を交換する場合が多くなりましたが、「訪問した側から立場の低いほうから差し出す。両手で差し出して両手で受け取る」が本来の形です。
注意すべきは、1相手のほうに向け、名乗りながら相手を見て差し出す。2受け取る時はていねいに受け、サッと目を通し、着席後にテーブルの上に置く。
3受け取った名刺は、必ず名刺入れにしまい、胸ポケットか上衣のポケットに入れる。ズボンのポケットにはしまわない、です。
「派手な私製名刺や汚れたり折れている名刺を使わない。名刺を切らさない、忘れない」ように気をつけて、名刺を出し入れする姿は美しくしましょう。名刺は自分の顔であり、会社の顔だからです。
今日の心がけ◆名刺は丁重【ていちょう】に扱いましょう